circus -第一幕-
□#02 踏み出す一歩
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――ゲーム開始一ヶ月で2千人が死んだ。
外部からの問題解決は、結局何ももたらされなかった。
それどころか、何らかのメッセージが届くことすらなかった。
あれからプレイヤーは大きく4つのグループに分かれた。
一つはあの茅場昌彦の出した開放条件を信じずに外部からの救助を待った者たちだった。
それに私が該当する。
中央広場での萱場明彦によるチュートリアルが終了し、皆が罵詈雑言を上げ、諦めて各々行動し始めたのを見て、私も漸く足腰に力が入るようになった。
私は何よりもゲームでの"死"が現実の"死"とリンクし、遠く離れた私自身の身体が死んでしまうことに恐怖を感じた。
だから、近くの宿屋の一室に引きこもった。
コルは初日に稼いだ分を使って、宿屋に住み着くようにした。
あのようなチュートリアルが始まるまでは、モンスターを積極的に探し、戦っていたというのに、今やその勇気や楽しさなどとうに消えてしまった。
一刻も早く外部からの救出がないか、と毎晩震える膝を抱えて眠れない日々を過ごした。
――
厄介だったのは、食事だった。
不思議なことにこの世界には食欲が存在するようで、初日から数日間、私のお腹は食事をせがむように、幾度となく鳴り続けた。
食事は残り少ないコルを使うのが勿体なかったため、食事は極力控えたかったし、
こんなゲームの仮想世界で食べる意味などあるのだろうか、という考えから私はまともにご飯を口にしていなかった。