circus -第一幕-
□#00 憧れ
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――
きらきらとしたスポットライトもなければ、会場を包み込む歓声や拍手もないが、
私は確かにその時、目の前で起こったことに魅了された。
私は小さい頃、いとこの兄さんに目の前で簡単なマジックやジャグリングを見せてもらったことがある。
それが強烈で、衝撃を受けたのを覚えている。
一番好きだったのはジャグリングだった。
くるくるとカラフルなボールが宙を舞うのがとてもきれいで私は何度もやってくれといとこの兄さんのせがんだのを僅かに覚えている。
――
『夢……』
ぱちりと目を覚ますとそこには見慣れた天井が広がっていて、私はゆっくりと瞼を閉じると、先ほどまで見ていたであろう夢の内容を思い出そうとしていた。
『(なんだか懐かしい夢だった気がする…)』
〜♪
『ん?』
ベッド脇のテーブルに置いた携帯端末から軽快な音楽が鳴りだし、私は再び目を開けた。
『はい、もしもし。』
「<あ、桃香か?もうすぐ時間だけど、13時ちょうどにできるのか?>」
『桃里兄さん。うん、多分できるよ。今起きたとこ。』
電話の相手はいとこの桃里兄さんだった。
桃里兄さんは近所に一人暮らしをしていて、ゲームなどにも詳しかった。
「<分かった。俺は練習があるから夕方の前にはINできるはずだから。>」
『ん、分かってるって。<はじまりの街>の宿屋で合流でしょ。何回確認するの。』
「<いやぁ〜、楽しみでしょうがいないんだって!じゃあ、またあとでな!>」
『ん、楽しみなのは伝わったから。じゃね。』
一方的に電話をかけてきたと思ったら、確認の電話だった。
電話を切ると、自然と私の視線は勉強机の上に置かれたヘルメットのような頭に被るような機器だった。
そう、今日はナーヴギアという意識を仮想世界へといざなってくれるハードを使ってプレイする≪ソードアート・オンライン≫というゲームの正式サービス日である。
さっきの電話の相手である、桃里兄さんの影響で私はゲームが大好きになり、色んなゲームをプレイしてきた。
そして、ソードアート・オンラインも絶対にプレイするために、桃里兄さんと一緒にナーヴギアの購入の長蛇の列にも眠い目を擦って並んだのも記憶に新しい。