ヤマトヒメ
□No.6 いいぞ、頑張れ飯田くん!
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初めてのヒーロー基礎学の日の次の日――
少しずつ見慣れてきた通学路の景色を眺めながら歩いていると、学校の方からざわざわと人の声が聞こえてきた。
すると、そこには雄英高校の校門の前にびっしりとマイクやカメラを持った報道陣が敷き詰まっていた。
『(う…、ここ通るのか…。)』
あまりの人の多さにげんなりとするが、ここを通らないことには学校に入れないため、私は覚悟を決めて一歩を踏み出した。
その瞬間、カメラマンの誰かが私に気付き、詰め寄ってきた。
「あのさ!雄英の生徒さんだよね!?オールマイトの授業ってどんな感じ?」
ずずいと顔に押し付けてくるマイクに思わず顔を顰めつつ、無理矢理にでも前に進もうとする。
『普通です…、ちゃんと真面目に先生をしてらっしゃいますから…。』
これだけ答えればもういいだろう、と簡単に記者からの質問に答えると、ぎゅっと鞄を抱えて再び前進を試みた。
「それでそれで!?」
記者からのその先を促すような言葉に私は「失敗した」と思った。
『(この人達、一言コメントすれば次を要求してくる…!)…急いでるので!』
「君、どこかで見たことがあるかと思ったら!武神ヒーロー、ヤマトタケルの娘さんでしょ!」
『ッ!』
そんな私の言葉など無視して父の話題を出し始めた。
一向に通そうとしない報道陣にイライラが募ってきたころ、ぐいっと突然腕を引っ張られた。
『へ…』
いきなり引っ張られたで、踏ん張ることができずそのまま引っ張られた方向に身体が傾くと、誰かにぶつかった。
『ご、ごめんなさ…!』
「…行くぞ」
ぶっかった相手は、あの轟くんで。
昨日の今日で避けていた相手にあっさりと捕まってしまったことに、少しだけ落胆していると、ずんずんと轟くんは私の手を引いて歩き始めた。
校門をくぐってしまえばこちらのもので、ちらりと後ろを振り返れば次の標的を見つけたのか、報道陣は校門から離れていった。
『あの、ありがとう…ございました。では…。』
これ以上一緒にいると気まずくて耐えられないため、さっさと校舎に入ろうとすると未だに握ったままの私の腕に力が入った。
「待ってくれ、剣」
苗字だけど名前を呼ばれたことに、体が思わずびくっと反応するが、これから話そうとすることに嫌な予感しかしないため、私はぐいっと掴まれた手を時計回りに回した。
「お」
これは護身用体術の一種で、掴まれた腕を解くためのもので、小さい頃に習得していた。
腕を解かれるとは思っていなかったのか、轟くんは一瞬怯み、その隙に私は全力で校舎へと走った。