ヤマトヒメ
□No.1 素質
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総人口の約8割が何らかの超常能力、
"個性"を持ち、その"個性"によって社会を守る
"ヒーロー"という存在が確立された世界――
今朝も通勤・通学の時間帯の電車の線路内に侵入し、暴れまわった敵(ヴィラン)を、デビューしたてのMt.レディというヒーローが退治したとのニュースがあった。
日常的にそういう事件が多発する中、私、剣命は今日も穏便に中学校生活を営んでいた。
「えー…、お前らも3年ということで、本格的に将来を考えていく時期だ。
今から進路希望のプリントを配るが…、
……みんな大体ヒーロー科志望だよね?」
教壇に立つ先生は先ほど配るといったプリントをバサッと空に放り投げた。
「う〜ん、みんないい個性だ!でもな、校内での個性の発動は原則、禁止な?」
「先生ェ〜、みんなとか一緒くたにすんなよ…。
俺はこんな没個性らと仲良く底辺に行かねぇよ。」
爆豪勝己……、偉そうに机に脚を乗せふんぞり返っている。
『(膨らみ過ぎた自尊心の塊……)』
爆豪の一言に教室中から大ブーイングが起きる。
「あ〜…、爆豪は確か雄英高志望だったな。」
「「「えぇ〜…!?」」」
『(倍率がやたらと高いとこ…。爆豪も受けるんだ…。)』
超有名な高校の名に先ほどのブーイングは消え、今は信じられないような言葉ばかりが聞こえる。
「そのザワザワがモブたる由縁だろ…。
模試じゃA判定、うちじゃ唯一の圏内判定、
あのオールマイトをも超えてェ、
俺はトップヒーローとなり!
必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!」
机の上に立ち始まったいつもの演説…
が、その覇気も先生の一言で凍り付く。
「あ、そういえば緑谷と剣も英雄志望だったな。剣に至っては、爆豪と同じでA判定だったな。」
『!!』
先生の一言に凍り付いたのは爆豪だけではない。
教室、そして私、そして席で目立たないように縮こまっていた緑色のもさもさ頭の緑谷くん…
私も緑谷くんと同じように両腕で顔を隠し、寝ている振り決め込んだ。
私はこんなとこで目立ちたくないのだ。
「ぷっ…」
「「「あははははははは!!」」」
一瞬の静寂も次の瞬間には爆笑に変わった。
私の話よりも、緑谷くんの方にみんなは食いつき、誰もが緑谷くんに視線を注いだ。
「勉強できるだけじゃ、ヒーロー科に入れねぇんだぞ〜!」
そう、彼は無個性。
この超人社会の世の中で、約2割の人が該当する、"無個性"に彼は属しているのだ。
ヒーローになるには、個性があることが絶対条件、とでもいうように
それをみんなは笑っていた。