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□束の間の休日
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「ねぇねぇ観月さん」



「…観月さん?」


隣に座っている観月さんに話しかけたのに、腕を組んだまま反応が無い。
もしかして何か怒らせてしまったのかな。
先輩は律儀な人だから、普段無視をしたりすることはない。
だけど、本当に怒ったときは別。
もう話もしたくない、と言わんばかりに口を閉じられるから、怖い。

そーっとソファから体を浮かせて表情を伺う。


「ん……」


私の心配とは裏腹に、観月さんは舟を漕いでいた。
なんだ、と少し拗ねてクッションを抱く。


でもまぁ、無理もないかもしれない。

最近の観月さんは、部活のことでとても忙しそうにしていたからである。
私がデートに誘っても、観月さんは練習試合や他校の偵察をする日だったりで予定が合わず、しばらく会っていなかった。
寂しかったけど、彼が部活が大好きで大切にしていることはよく知っていたから、仕方がないと割り切っていた。
そんな私を気遣ってか、観月さんは久しぶりに寮に呼んでくれたのだ。
本当は私に構っている時間さえ惜しいくらいだろうに。


ありがとうございます。

観月さんの華奢な肩に頭を預けると、その衝撃で起きたようだった。


「すみません、あなたがいらっしゃっているのに」


そうして瞼を開いたが、数秒後にはもう閉じかけたり開いたりしている。
そんな必死に睡魔と闘っている姿が可愛いくて、胸がキュンと締め付けられた。


「観月さん、無理に起きていなくていいですよ。ほら、どうぞ」


思わず微笑みながらクッションを置いて自分の腿を軽く叩いてみせる。
少し経って私の意図を悟った観月さんは照れくさそうに口を押さえた。


「なっ………そ、それは…!」
「いいんです。私は、観月さんが疲れているのを承知でお邪魔しているんですから」
「……ありがとう。では、お借りします」


彼の髪は柔らかくて、腿に触れると少しくすぐったかった。
愛おしさに耐えられず、その髪を撫でてしまう。


「こんなデートも悪くないですね」


観月さんは瞼を閉じながら「ええ」と呟いて、にんまりと笑った。





end

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