夢の風花

□夢の終わり
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「じゃあ、剣心。行ってくるね」

「夕飯は多めに頼むぜ」

「ああ、いってらっしゃい」


剣心は出稽古に行く薫と弥彦を送り出し、二人の姿が見えなくなると道場へ入ろうとする。
だが、剣路が泣きだしてしまう。

「よしよし、泣くな〜〜」

あやしていると、背中に何かが当たった感触がした。

「あ、すみません」

見ると弥彦と同じ歳頃の少年がいた。
どうやら彼がぶつかってしまったようだ。

「いやいや、大丈夫でござ…っ」

ござる、と言おうとして剣路を抱いたままその場に膝をついた。

何か、生温かいものが背を伝って流れているのがわかる。
それはすぐに足元へ到達し、血溜りとなって広がっていった。

「お…主…」

剣心が力を振り絞り少年を見上げると、少年は剣心への敵意と殺意を剥き出しにした。

「父と母の仇!!覚悟しろ!緋村抜刀斎!!!!」

少年はまだ剣心の血が乾いていない刀で更に剣心を貫く。

剣路を庇うようにうずくまる剣心に、少年は罵声を浴びせる。

「お前は俺の父を殺した!!それを知って母さんも自殺した!!全部、全部お前のせいだああっ!!」

剣心は漸く事の顛末を理解した。
人斬りとしての罪―。
不殺を貫き、目に映る人を守ることが償いになると思っていた。
が、それは自身の思いこみであり、自己満足に過ぎなかったのだ。
大切な人を殺されて失った―遺された者の痛みが癒えて許されることなど決してないのだ。

「この子…だけは…」

「お前も、大切な人を殺される痛みと自分が殺される痛みを知れ」

そう言うと少年は剣心もろとも剣路をその剣で貫いた。









薫達は後に警察から二人の死を知らされた。
うずくまる剣心を、刀が剣路と共に串刺していたという。

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