オリジナル小説

□BeastBride〜獣人の花嫁〜
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『プロローグ』


信じてたのに、裏切られた。

友達だよ、と言っていたその口で、今は私を罵っている。

私を囲んで、痛めつける。

―心も体も。


『アンタなんか死んじゃえば?その方が皆喜ぶよ!!』

『汚いからこっち来んなよ、バイキン』

バケツの水を掛けられたり、モップで殴られたり。

あぁ、机に数多の落書きと、白い菊の花も置かれていた。

突き飛ばされるのなんてしょっちゅうあった。

物がなくなる、壊される。

その内授業もまともに受けられなくなって、とうとう先生に相談した。


―けれど、待っていたのは。

さらなる地獄だった。

いじめは過激さを増し、先生は…ただ見てるだけ。

私が倒れていようと、泣いていようと、見てみぬ振り。


けれど私は学校に通わなければならないのだ。

父と母の体面を保つために。

そうだ。

学校はおろか、自らの家ですら味方は存在しないのだ。



―そんな私がまだ正気を持ったままだったのは、彼らが…動物がいたからだ。

人目につかない、林の奥で。

いつも動物と過ごす憩いの時間があった。


小鳥や猫、犬たちなどにご飯を上げ、その見返りとして体を撫でさせてもらう。

柔らかな毛並みは触れるだけで心を癒し、その体温は私に温もりをくれた。

慣れてくると、膝や肩に乗ってくれたりする子も中にはいた。


彼らは純粋だ。

人のように他者を欺く能力はないし、あったとしてもそれは生きるため。

人間は己が楽しみ、欲を満たすためだけに他者を傷つけようとする。


だから私は他人が嫌い。

動物が好きで、人間が嫌いで。



何で人間に生まれたのかと、恨む事もあった。

彼らのように自然に生きることを望んだ。



―でも今、この瞬間だけは人間であった事に感謝をした。


「待ってて、ね。今助けるから」

私が必死に向かう先には、傷ついた猫がいた。

林の奥には崖があって、少し下を見ると、ほんの少しの出っ張りがある。

そこに怪我をしていた猫が、落ちてしまったのだ。


「ほら…良し、いい子だね。今上に行くからね」

やっとの想いで到達し、猫を身長に下げてきたカバンに入れる。

―後は登るだけ。

天気が悪くなってきており、早くしないと上れなくなってしまう。

そのため急いで登ったのがいけなかったのか。


ズルリと音をたてて手が滑った。

私は咄嗟にカバンに手を入れ、猫を抱き上げ―

「痛いかもだけど、ごめんね?」

腕を振り上げ猫を崖の上へと投げた。

その瞬間。


掴んでいた場所が崩れ私は崖下へと落ちていく。

その最中に視界がクリアになる。

死ぬ直前なのかもしれない。


よろめいて立つ助けた猫とその仲間の猫たち。

ニャーニャーと鳴きながらこちらへと身を乗り出すようにして、私を見ていた。



―ありがとう、みんな。

届かない声でそう呟く。



動物達への感謝の言葉を最後に、私の意識は閉ざされた。
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