空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ8
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結論から言えば来てしまった、及川徹や岩泉一が通う青葉城西高校に。
いや、言い訳をさせてもらえば野球部へ商品を持っていき、さあ帰ろうかとしたところに運がいいのか悪いのか(彼にとってはいいのだろう)岩泉と出会ってしまったのだ。
「……来たのか」
「『来たのか』ってきみから誘っておいて変なことを言うね。私は偶然仕事で来ただけで決して試合を見に来たわけではないよ」
「素直じゃないな」
「いや、本心だが」
「じゃあついてこい」
「おい! 人の話を聞け!」
と。
こんな感じに(いや、六割ぐらい脚色しているが)岩泉に連行されたのであった。
体育館の中に入ればセッティングされたコート、各自アップをしている部員がいた。
顧問の先生に追い出されることを期待したが、話が通っているのかあっさりと裏切られた。
舌打ちをしたくなったがぐっと我慢した。
「…………はあ」
ため息を履きながら二階に続く階段を上ろうとしたとき、体育館の入り口付近でなにやら声がした。対戦相手だろうか、とじっと見ていると、最近見覚えのある黒いジャージを着た人だかりが視界に入った。
「……あ」
「あ! 名前さんだ!」
目立つオレンジ髪の少年、日向翔陽が所属する烏野高校男子バレー部だった。
「やあ、一週間ぶりかな?」
「どうしてここに?」
「仕事できてたんだけど、帰ろうとしたところに拉致られてね」
「え、拉致って……」
「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえよ」
少し引いた目で青葉城西を見る月島にすかさず突っ込む岩泉。
変なところで部の印象を悪くしたくなかった。
「でも、なんで苗字さんを?」
「なんだ、烏野の連中は知らないのか? この人は」
「『跳躍の女神』、デショ?」
「……知ってんじゃねえか」
いかにも知っているのは自分だけと言わんばかりの岩泉に月島は苛つき、つい口を挟んだ。
どうだと言わんばかりの月島に岩泉は静かに対抗心を燃やす。
「……あの、『跳躍の女神』ってなんですか?」
まあ。
日向のそんな一言で周りの空気が一気に覚めたのだが。