空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ5
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武田から青葉城西高校との練習試合の詳細を聞いた。
『影山飛雄をセッターとしてフルで出すこと』
レギュラーの三年を差し置いての絶対条件に、一緒にバレーをやってきた人間の気分を害するのは容易いが、その本人である菅原はそれに賛同した。
日向と影山の攻撃がどれくらい通用するか見てみたいとのこと。
純粋にそうかもしれないが、しかしそれ以上何も言わない菅原に大地たちはそれを受け入れることしかできなかった。
武田から詳細を聞き、部活時間も終わりに近づいたこともあり、そのまま部活は終わった。
ネットやポールを片付け、モップをかけていると、なにか考え事をしている月島の姿が目に映った。
「どうしたの、ツッキー」
「……あの人」
「あの人?」
「さっきまでいた女の人」
一瞬誰かわからなかったが、それが名前のことだとわかった。
「ああ、苗字さん? だっけ。綺麗な人だったよね、格好いい系だし。苗字さんがどうかした?」
「どっかで見たことある気がするんだよね」
「月島もか?」
二人の会話を聞いていた大地がそう言った。
本来なら掃除をサボっている二人に注意をしようとしていたが、名前を見てから心の奥でなにかがずっと引っかかっている気がした大地はつい話に入ってしまった。
「店に行ったとかじゃないのか?」
近くにいた菅原が言う。
品揃えがいいためよく利用しているのを知っているし、そこの娘だと言っていたため、その考えはすぐに浮かんだが、即否定された。
「あの店には何度か通ったことはあるが、女の店員すら見たことないんだ」
「それに『会った』ことがあるんじゃなくて『見た』ことがある気がするんです」
月島の不思議な言い回しに、全員が首をかしげた。
「ならどっかですれ違ったとかじゃねえのか?」
田中の意見が一番もっともだが、しかしなにか違う気がした。
「そんなの逆に覚えてないですよ。そうじゃなくてテレビとか雑誌とか、で…………」
なにかが掴めそうな気がした。