空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ4
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「おお、いい反応だね。それとさっきのスパイク、格好良かったよ」
「あ、ありがとうございます!」
まさか褒められると思っていなかった田中は頬を染め、テンションが上がっていく。
「えっと、あなたは?」
黒髪の、いかにもキャプテンっぽい短髪の黒髪少年が声をかけた。
「ああ、詳しいことは後で話すよ。それより今は試合の続きをしたらどうだい? 今の熱を、今の感覚をここで止めてしまったらもったいない」
名前は真っ直ぐと黒髪の少年を見る。黒髪の少年も、その他の部員も名前をじっとみつめる。
「……よし、お前ら、やるぞ!」
意を決したように黒髪の少年が部員達に声をかける。それに答えるかのように彼らはコートに立つ。
そして始まる第二セット目。
試合の攻防が続く中、冷静で、どこか冷めているようにも見えた月島が上着を脱ぎ捨てたりあれから何度か日向と呼ばれた少年のスパイクが決まったりした。
「……影山、確かに凄えけど、すんごい神経すり減らしそうだな、あの精密なトス。日向も普通の何倍も動き回ってしんどそうだ」
「うん……でも、楽しそうだ」
目の前の彼らは嬉しそうに、満面の笑みでガッツポーズをする。
「……バレーって、そういうのが楽しいんじゃないの?」
「え?」
名前は話している二人の会話に混ざる。しかし目線はコートに向けたまま。一秒でも長くコートを見ていたいのだ。
この眩しくてきらきらした舞台を――
「苦しくても、しんどくても、神経すり減らそうとも、それでも決まった一点は大事でとても嬉しいんだ。たった小さな一点、それでもあたし達選手からすれば大きな一点。それが決まった時どれだけ嬉しくてどれだけ感動するか、実際にやっているきみ達ならわかるんじゃない?」
「……そう、ですね」
彼女の言いたいことはわかる、とてもわかる。
彼らもそんな感情になったことはあるし、現に今コートに立っている彼らもそんな感覚なのだろう。
だから彼らはコートを見る。
今その感情を十分に、存分に体験している彼らを――
そして――第二セットが終わった。
勝者は影山・日向チームとなった。