空を自由に飛べ

□空を自由に飛べ2
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名前は二つの段ボールを地面の上に置き、体育館の扉の前に立っていた。

「んー、入りづらい」

彼女にとって体育館は一番青春を謳歌したと言ってもいい場所である。そして今現在その場所で青春を謳歌している人達の中に部外者である自分がずかずかと入っていくのは不粋である。

「……あの」

そんな彼女に、誰かが声をかけた。

後ろを振り向くと、そこにはジャージを着た眼鏡の美女がいた。

「ああ、安心して、怪しい者じゃないから」

そう言うことを言う奴ほど怪しい人間だと思うのが一般的である。

逆に大の大人が体育館へと鉄扉の前で何もせずにいる状況でよく声をかけようと思ったものだ。

「実は届け物を持ってきたんだけど、どうやら受け取ってくれる先生がいなくてね。顧問している部活の場所に来たのはいいがどうしようかと途方に暮れていたところだったんだ」

「あ、私、その部活のマネージャーです」

なんという偶然。

いや、もはや名前にとって奇跡と言いたいほどだった。

「んじゃ、ここにサインちょーだい」

自分の店と無理矢理押し付けてきたもうひとつの店の領収書(便利なことにバインダー付きである)とペンを手渡す。

1,2秒ほどして返ってきた領収書には綺麗な字で『清水』と書かれていた。

「へー、綺麗な名字だね。下の名前は?」

なんとなくナンパっぽいことを言う名前である。

「……潔子」

「名前も綺麗だね」

そういうと潔子は嬉しいのか頬を赤く染めた。その姿は同姓である名前もきゅんとした。

「あたしは苗字名前。まあなにかの縁だ、これからもうちの店をご贔屓に」

そして車を停めた駐車場に向かおうとしたら、

「あの!」

と。

呼び止められた。

まさかここで呼び止められると思っていなかった名前は少し驚いた顔で振り向く。

「よければ中、見ていきませんか?」
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