空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ19
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GW。
いわゆる、大型連休というものに世間は突入した。
一年でもっとも長い祝日(といっても、最近はシルバーウイークというものもできたりするから一概には言えないのだが)。
正直なところ、名前にとってこれは主に学生や一部の企業の人間しか関係ないと思っている。
実際、彼女の実家であるスポーツショップも現在進行形で営業中である。
むしろ、稼ぎ時だったりする。
GW。
長期の休み。
学生の休み。
イコール部活の時間、である。
大抵、どこの学校もこういう時期は一日の練習、挙句の果てには合宿を組むところが多い。
運動部しかり、文化部しかり。
なのでこの時期の消耗品の出品が激しいのである。夏休みや冬休みの次に。
そして、そんな忙しい日、名前は休みだったりするわけなのだが――
「はあ? 烏野バレー部の合宿に来てくれぇ?」
何故か呼び出しを食らっていた。
「なんで」
「烏養んとこの孫から電話があってな、お前に来て欲しいそうだ」
どうやら店の方に電話があったらしい。
(架けてほしくないけど家に架けろよ、家に)
電話を受けた祖父の言葉から別に店に用事があって架けたわけではないらしい。
「営業妨害で訴えてやろうか、あいつ。……で、その電話ってまだ繋がってたりする?」
「おお、繋がっとるよ。お前と直接話がしたいそうだ」
「はあ……、嫌な予感しかしないな」
家から店に繋がる廊下を歩き、段差になっているところで靴を履く。
「あい、もしもし」
「おお、悪いな」
開口一番に言われた言葉がこの一言である。
(こいつ、絶対悪いって思ってないだろ)
名前は口から出そうになったその一言をぎりぎりで飲み込む。
「前置きはいいよ、で、何の用?」
「さっきお前んとこのじいさんにも言ったんだが、烏野の合宿に来てくれねえか?」
「なんであたしが行く必要があんのさ。あたしは指導するつもりはないって言ったよね?」
「あー、それも頼みたいことではあるんだが、今日は違うんだ。実は、清水が体調悪いらしくてな、さっき家に帰らせたんだが、マネージャーが清水しかいなくってな……」
「なるほど……。今まで彼女しかマネージャーがいなかったから何をどうしたらいいかわかんないってわけね」
「まあ、そういうわけだ……」
「マネージャーがいること自体ありがたいことなんだけどさ、でも他の部員はできないの?」
「…………ドリンクの粉の分量間違えたり洗濯機の粉の量を入れすぎて泡まみれにさせたり」
「わかった、もう大丈夫」
思ったより壮絶であった。
想像を絶するとはこのことであろう。
なんかもう、逆に想像できる。
「……てことで、お願いできるか?」
「あー、うん、まあ、そういう事情なら」
清水さんが治るまでね。
ため息とともに受話器を置く。
波乱万丈である。