空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ18
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「いやー、よくわかんないけど青春だったなー」
結局。
午後八時過ぎにようやく練習試合は終わった。
結果としては烏野町内会チームの勝利である。
「『トスを呼んでくれエース!』とかねー、青春いいねー」
「『俺がいればお前は最強だ』とか言ってみてえ、高校生かっけえ!」
「…………………」
「…………………」
「俺らおっさん組の置いてけぼりときたら!」
「現役高校生なんだから青春当たり前なんだし、言ってみたいってそんなに強くもなければ技術もないでしょ」
車の鍵を片手に、体育館から出てきた名前は『おっさん組』に言う。
「うっせえ」
「てか、俺らとそんな年変わんねえ苗字に言われたかねえよ!」
「…………何か言った?」
「! ……いいえ、なにも。すんませんっした!」
「次似たようなこと言ったらこの先ずっと割引なんてしてやんないからね」
「それだけはご勘弁をっ!」
「ははっ、嶋田が苗字に口で勝てるわけねえだろ。……なんつーか、まだ色々ばらばらな感じだけど、ちゃんとまとまったらいいとこまで行けんじゃねーか、お前ら」
「! ありがとうございました!」
そんなわけで。
町内会チームと烏野チームの練習試合は終わった。
ちゃんとしたメンバーでの試合ではないが、今回の目的は個々の実力を見ることだ。なんだか知らないところでいろいろいざこざがあったようだが、その目的は果たしたといってもいいだろう。
「さてと、んじゃあたしも帰るよ」
「ええ! 帰っちゃうんですか!?」
「え、いや、そりゃ帰るよ。別に練習試合をしに来たわけでも見に来たわけでもないんだし」
「でも最後までいたじゃないですかー!」
「それは繋心が見てけっていったからであって、本来のあたしの仕事じゃないわけで……てか、もう試合終わったんだから帰ってもいいでしょうよ」
何故かテンション高めに迫ってくる日向に名前は珍しくたじたじである。
あまりのテンションの高さにどう接したらいいのか難しい、特に高校生となればなおさら。いままで彼女の周りにいない人種である。
逃げるように(と思いたくないが)さっさと帰ってしまおうと体育館に背を向け歩きだそうとしたとき、
「なんだ苗字、お前まだいたのか」
と。
体育館からひょっこりと顔を出した繋心によって引き止められてしまった。
「………………これから帰るところさ」
「ならちょうどいい、もうちょっと残れよ」
「はあっ!?」
「お前、今日車で来てんだろ? もういい時間だし、このまま帰らせたら保護者も心配するだろ」
「…………なるほどね」
送っていけ、ってわけね。
呆れたように額に手を当て、ため息とともにこぼす言葉。
確かにこれから体育館の片付けをし、顧問の話を聞き着替えて帰るとなるといい時間どころか、未成年が出歩いていい時間帯ではなくなる。
ここがいくら田舎といえど、夜道が危ないのはどこも一緒である。
むしろ街灯が少ない分、危険度が上がっているといっても過言ではない。
「……わかったよ、待ってやる」