空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ17
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ゲームもほどなく進み、十四対八。
高校生チームは前衛が田中・日向・影山というチームの中で一番攻撃力が高いローテンションである。
「あの、次こいつにトス上げるんで全力でブロックしてください」
隣に立つ日向を指差しながら、影山は社会人チームの前衛にいる滝ノ上と旭に言う。まさかあの影山がそんなことを言うとは思わなかった日向も社会人チームふたり同様目をむく。
天才さまの考えていることはわからない。
「なんだ、挑発かぁ?」
「はい挑発です! ナメたマネしてすみません!」
「ぶはははっ! なんだお前おもしれえな! よっしゃ、その挑発乗ったる!」
「あざっす!」
真っ向から嘘偽りのない影山のことがどうやら気に入ったようだ。滝ノ上はとても楽しそうに笑う。
ゲームメイクの要であるセッターのくせにどこか馬鹿正直でなにをしでかすかわからない。きっと今回のそれも考えてのことだろう。
「なに考えてんだ? 速攻はあくまで予測不可能だから有効なんであって手の内晒してブロックと真っ向勝負になったらちんちくりんに勝ち目ねえだろ」
「……そうですね、真っ向勝負になったらそうかもしれないですね」
「そこまで馬鹿じゃないと思うから、なにかしら考えてんでしょ。ふたりのコンビネーション、普通じゃないんだし」
「随分気に入ってんだな、あの一年生コンビ」
「………………そう? まあ、技術はてんで駄目だけど運動神経が人一倍以上の奴とバレーに対してのみ天才オールラウンダーな凸凹コンビなんだ。誰も考えられない可能性を生み出すんだから、見てて楽しいのは確かでしょ」
そう、たったそれだけ。
けっして気に入っているというわけではない。
高校生チームがどう動こうが最後にボールを触る人間がわかっているため、旭も滝ノ上も日向をマークしている。プレッシャーに弱い日向はそれだけで委縮している。
「今のお前はただちょっとジャンプ力のあって素早いだけの下手くそだ。大黒柱のエースなんかになれねえ」
「ちょ、ちょい……」
「おい」
「でも――俺がいればお前は最強だ!」
周りの制止の声なんて耳に入れず、ただ影山は日向に言う。
驕りでもなんでもない、ただの事実を。
(ああ――もう、本当に)
名前はちらりと設置されている時計を見る。
彼らの眩しさに目が潰れてしまいそうだった。
真っ向から見ていられない。
「旭さんのスパイクはすげえ威力があって三枚ブロックだって打ち抜ける」
「えっ、いや、でも毎回じゃないし、えーと」
「動揺しすぎっす!」
「じゃあお前はどうだ。俺のトスがお前に上がったとき、お前はブロックに捕まったことがあるか」
ピーッ。
話の途中ではあるが名前は笛を鳴らし、ゲームを続けさせた。
ここから先は日向が考えることだ。
日向が――証明するのだ。