空を自由に飛べ

□空を自由に飛べ14
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なんとか午後の授業に間に合ったふたりは真面目かどうかは別として授業を受け、部活の時間となった。

キャプテンである大地や顧問である武田先生に話しかけられるたびにびくびくどきどきしたが、どちらも今日の昼に学校を抜け出したことを口にしなかった。どうやら本当に学校に伝えていないらしい。

名前のことを信用していなかったわけではないが、しかし緊張はするものはしてしまう。

心の中で手を合わせて謝っておく。

「すみません、あの、俺……ここで失礼します」

部活も終わり、最近恒例である坂ノ下商店で肉まんを食べ終え、影山は言った。

「お、なんだ珍しいな。用事か?」

「……まあ、そんなところです」

菅原の言葉に曖昧に答え、影山はその場から離れた。

「そういえば、影山の奴、部活中ずっとうずうずしてたよな」

「ああ。最初はボールを触りたいのだとばかり思っていたが」

バレー馬鹿である影山ならばありえそうな話ではあったが実際そういうわけではなく、本当に様子がおかしいかったのを思い出した菅原と大地は影山が去った方向を見ていた。

そんな影山が向かうのは――名前のところ。

昼にも会った。

目的も言った(日向が)。

でも――また会いたくなった。

「いらっしゃいませー」

自動ドアに設置されている来訪のベルが鳴ると、それに反応した店員が声をかけた。

「………………っ!」

その声にすら反応してしまう。

しかし声の主の姿が見えず、影山は店内をねり歩く。

と。

「あ」

「……あ」

なんと、そこにいたのは月島だった。

(…………そういえば、さっきいなかった、気がする)

先輩たちに断りを入れ、部員たちと離れる前にいた面子を思い出す。

セットだといわんばかりに、初めて会った時からいつも山口と一緒にいるというのに今日は山口一人だけだった。

気がする。

正直、あの場にキャプテンである大地や菅原、田中や日向以外覚えていない。

入部してまだ日が浅いということもあるが、もともと人を覚えるのは苦手である。それが嫌いな人間であればもっと。

だからそういえば月島いなかったなー、というより、なんで学校外でもこいつに会わなきゃいけないんだよ、という気持ちの方が大きかった。

「……なんでいんだよ」

「なんでそんなこと王様に言われなきゃいけないわけ? 僕がどこにいようが勝手デショ? それともなに? 平民の行動がそんなに気になるわけ?」

「そんなわけないだろ! その呼び方やめろ!」

「えー? なんのこと?」

人を馬鹿にしたように笑う月島。

なんとも楽しそうだ。

こういうところが影山は苦手なのかもしれない。

「ちょっと、いくら人がいないからって店で喧嘩はやめてくれない?」

と。

いつも通りの言い合い――部活内だけでの話だが――を始めようかとしたとき、制止の声が聞こえた。
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