空を自由に飛べ

□空を自由に飛べ13
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ふいっ、と視線をレジの後ろにある時計を見ると十二時過ぎ。

しっかりとその盤上を確認してから目の前の二人を視界に入れる。

「……なんで、いるのかなあ」

名前の視線の先には日向と影山がいた。

今日は平日であって、太陽がほぼ真上に来ようとしているのではないだろうかという時間帯。

つまり、本来学校で学友たちと食事をしている時間帯であるはずの彼らは何故か名前の目の前にいた。

「きみ達、学校はどうしたんだい?」

「今、昼休み中です」

「……いや、決してそういうことを聞きたかったわけではないのだけれども」

影山は斜め上の回答を答えた。

これには名前も呆れるしかなかった。

「影山と話してたんです。あれから名前さんに会ってないなーって」

「……まあ、私も仕事あるし別にきみ達に会う必要性なんてないし」

「それで、名前さんに指導してもらいたいって話になって会いにきました!」

「え、ぶっ飛び過ぎない?」

そのときの(といっても数分前の出来事なのだろうが)二人の会話を想像するも全くできなかった。

しかし二人の言いたいことは簡単だった。

烏野高校男子バレー部の指導をしてほしい、と。

顧問である武田先生に話を聞いたのか、それとも二人で勝手に決めたことなのかまだ付き合いの浅い名前には見当のつかない話ではあったが、考えることは一緒らしい。

彼らが昨日電話で武田先生に言ったように『苗字名前の名前』や『元全国大会出場者』を気にしているような柄じゃないのはさすがにわかるが。

「青葉城西との練習試合のあと、名前さん、及川さんに的確に評価してたしスガさんのこともちゃんと見てた」

「……あんなの、誰にでもできるよ。私だったからできたというわけでもない」

「技術面だけじゃなくて精神面もしっかり見れていたのは、それは名前さんが数多くの試合を、選手を見てきたからですよね!? 誰よりも多くのプレイや人間関係を見てきたからこそ、名前さんしかできないことですよ!?」

「……………………」

別に好きで数多くのプレイや人間関係を見てきたわけではない。

バレーが好きだから色んな人のプレイを見て勉強した。

人から疎遠にされたくなかったから他人との人間関係を気にしていただけ。

特別なことをなにひとつとしてやっていたわけではない。

好きだから吸収して。

嫌われたくないから周りを気にしていただけ。

影山が力説したほど、誇れるものでは決してない。
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