空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ11
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青葉城西との練習試合は二対一という形で烏野の勝利で幕を閉じた。一年生を入れての初めての試合はぎりぎりの勝利だったとはいえ大成功だったといえるだろう。
帰る準備をしている烏野を背に名前は二階のエントランスから降り、第三体育館から出て行く。
「名前さん!」
「!」
後ろから名前を呼ばれ振り返ればそこにいたのは先ほどまでコートにいた及川だった。
「……あの、俺」
「今日の試合、よかったよ」
この前の店でのことを謝ろうとした及川の言葉を遮り、名前はまっすぐ及川を見て言う。
「ピンチサーバーだけだったけれど宣言通りにボールを持っていくコントロール力にパワー。あんな精密なサーブは一朝一夕に身につくものじゃあない、相当練習したんだね」
「……………………っ!」
名前の言葉に及川の心にじんわりと浸透していった。
長い間憧れ、追い求め、恋焦がれ、いつか越えることを心に決めた相手から認められた。これが歓喜以外になにがあろうか。
「今度は正セッターとしての実力を見てみたいな、今日はきみのサーブとたった一回のレシーブしか見ていないからね」
「! 次も、見てくれるの……!?」
「ああ。きみの――きみ達のプレイを見たくなった」
「!」
名前の微笑みに顔を赤くした及川は名前に顔を見られないように右手で口元を抑え、目を逸らす。
(反則だろ、あんな顔……っ)
顔の熱が下がるのを待つ及川を見ている名前はわけがわからず首を傾げる。
「ああ、そうだ、岩泉くんにお礼を言っておいてよ」
「…………は?」
顔の熱が下がるのは思ったより速かった。
「彼に誘われなかったらそもそも見に来ていなかった。多分、こんないい試合を見れなかったら後悔していただろう。だから、ありがとう、と」
大好きな人が信頼し合っている(と自分は思っている)岩泉に対してとても嬉しそうに語るものだからもやっとした気持ちにはなったがしかし及川の選択肢はひとつしかなかった。
「……わかったよ」