空を自由に飛べ
□空を自由に飛べ10
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病院から診察を受け、会計を済ませた及川徹は練習試合真っただ中であろう母校へと足を運ばせる。
足の怪我についてまた怒られるのだろうかということを考えると足のスピードは下がるし学校に行きたくなくなる。
怒られるのは嫌だ。
それが幼馴染であり腐れ縁である岩泉ならばなおさらである。
それに――彼女にも迷惑をかけてしまった。
岩泉のことである。違うと言ったがしかし彼なら彼女のもとへ行き何か聞いただろう。少なからず憧れている彼女にほんの些細な殺意を抱いて――
苗字名前。
結局あれから逃げるように店から出てしまってそれ以来会っていない。
怒りに任せて店を出た自分も悪いが、しかし彼女にも原因がある(と、人任せにまでしないと潰れてしまいそうだ)。勝手にバレーの世界から消えたと思えば勝手に家業を手伝っているときた。なんのために頑張ってここまで来たのかわかりゃしない。
いや、これは自分勝手なことを言っているのはわかっている。
自分勝手で。
傲慢で。
未練たらたらである。
「あーあ、もう一度名前さんのプレー見たかったなあ……」
結局のところ、たったそれだけのことなのである。
憧れて焦がれて尊敬している彼女のプレイを。
もう一度となく何度でもこの目に焼き付けておきたかったのだ。
彼女のプレイに魅せられたんだ、どうしよもなく。
けど、やっぱり、無理なのだろう。
そんなこと頭ではわかっていても精神がついて行かなかった。
あのとき見た姿はどこも怪我をしている様子はなかった。
怪我の後遺症があるというわけでもなさそうだった。
それなのにやめてしまうのはやっぱりもったいないしそれ以前に悔しい。
でも悔いていても仕方がないのはわかっている。
だからほんの少しでもいいから前に進む努力をしようと思う。
今すぐには無理だけれども、彼女にもちゃんと謝りに行こう、仏頂面で申し訳なさそうな顔をした岩泉を連れて。
その後のことはそのときになってから考えればいい。
いつの間にかついた学校の体育館の扉の前に立ち、一つ深呼吸してから扉を開ける。
「ごめんごめん、遅れちゃ、って……」
入ってすぐの入り口は体育館全体がよく見えた。
見慣れた我が校の練習ユニフォームに今回の練習試合相手の姿。二階のエントランスには学校の応援(というよりは及川なのだが)にきた女子生徒に交じって――彼女がいた。
(え、……なんで!?)