蓮和物語
□第4話
2ページ/2ページ
「……この……たわけが……ッ」
膝から崩れ落ち、苦しそうに荒い息を吐く。
「…この…たわけが…ッ。貴様の力では適わんという事は先刻承知済だろう…!それとも自分の魂でさえくれてやれば全て済むと思ったか…どちらにしろたわけだ…!」
「……悪かった……────俺はただ……」
「気にするな……と言いたいところだが…残念ながら今の私も、朝陽も奴とは戦えそうにもない……」
一護は少し前に虚に吹き飛ばされた朝陽を見た。頭を強く撃ったからか、地面にグッタリと倒れて動く気配すらない。
「このままでは全員…奴のエサになるのを待つばかりだ………」
「(────俺のせいだ…─!みんな死んじまう…!)」
何とも言えない悔しさに、拳を握り締める一護。
「…家族を助けたいか…?」
「!!あるのか!?助ける方法が!?教えてくれ!!」
「1つだけある…いや正確には…1つしかないと言うべきか…」
痛む体を無理矢理動かし、ルキアは半身身を起こす。
そして一護の目の前に斬魄刀を突き出した。
「貴様が………死神になるのだ!!」
「!!な………な…何言ってんだ…そんなことが…」
「できる!貴様がこの斬魄刀を胸の中心に突き立て…そこに私が死神の力を半分注ぎ込むのだ!そうすれば貴様は一時的に死神の力を得…奴とも互角に戦えるはずだ!」
「そんなことして本当に…大丈夫なのか…?」
「…わからん。もちろん貴様の霊的資質の高さを見込んでの計画だが…成功率は高くはないし…失敗すれば死ぬ…!!だが他に方法は無いのだ!!迷っている暇もな。」
どうしよう。家族は助けたい。でも、成功可能性は低いという作戦。失敗すれば死。強ばる体に、早くなった鼓動が耳まで届いた。
そんな時、
「…おにいちゃん…」
「!!」
大切な妹の声に振り返れば、彼女は意識を失ったまま寝言を呟く。
「どこ……?…おにいちゃん」
「…遊子…怖い夢でも見てるのか…」
「来ちゃだめ…危ないよ……早く逃げて……………おにいちゃん……」
「(───ちくしょう…!どうしてウチの連中はどいつもこいつも…自分が死にかけてる時に俺の心配なんかしてんだよ…!…自分の事でビビってる俺が……)」
一護は拳を握った。
「(───バカみたいじゃねぇかよ!!)」
覚悟を決めて。
「刀をよこせ、死神!テメーのアイデアにのってやろうじゃねぇか!」
ルキアは微笑んで一護を見上げた。
「”死神”ではない。”朽木ルキア”だ。」
「そうか……俺は黒崎一護だ。お互い、最後のアイサツにならないことを…祈ろうぜ」
ブオオオオオ
近付いてくる虚。ルキアはゆっくりと立ちたがって一護に刀を向ける。
「『虚』が来るな…」
「急がないと…」
一護は向けられた斬魄刀に手を添えた。
「……行くぞ。」
「……ああ。」
ドクンドクン。と激しい鼓動が聞こえてくる。
一護の体を斬魄刀が貫いたその瞬間、2人を中心に眩しすぎる光が放たれた。
「!?」
虚の動きが一瞬止まった時、ゆらりと見えた影がそれの腕を斬り落とした。
立っていたのは死覇装に身を包み、身の丈程の大刀を持った一護の姿。
力を移し、死覇装では無く白い着物を身につけたルキアは驚愕した。
「バカな…半分のつもりが…全ての力を奪い取られてしまった……(しかもこの感覚は──……あの時の…)」
「連中の気配を全く感じなくなってしまったのだ…」
「フィルターがかかったように聞こえる…」
「これに今まで気付かなかったとは!!」
「まるで何か大きな力に感覚を阻害されているような──」
「(あれはこいつだったのだ!!あの部屋には、こいつから発せられる霊圧が満ちていた…それが私の感覚をことごとく混乱させていたのだ…!死神が見える人間など見たことがない!鬼道を破る人間など見たことがない!個々の霊力に呼応して形を変える斬魄刀が──…あんなにも巨大になったところも見たことがない!!)」
一護はその斬魄刀で虚の片足も斬り落とす。
「ウチの連中に手ェ上げた罪を思い知れ、サカナ面!!」
「(こいつは本当に一体──…)」
大口を開けて襲い掛かってくる虚の仮面を見事に両断して見せた。
「(───何者なのだ……?)」
ーー