蓮和物語
□第4話
1ページ/2ページ
「(遊子!!親父!!)」
階段を一気に駆け下りた一護は、悲惨なリビングを確認する。
壊れたテーブル。
血塗れで倒れる一心。
壁に開いた大きな穴。
その奥に見える大きな影。
それと目が合った瞬間に確信した。
「(────こ……こいつが………『虚』………!!)」
化物の様な虚を目の前にして、恐怖に支配された体はガチガチと震え出す。
そこへやって来た朝陽は立ち尽くす一護に叫ぶ。
「おい!!アンタ死にてぇのか!今すぐそこから離れろ!!」
彼の声なんて聞こえてはいなかった。だって、虚の手に握られているのは…
「遊子!!」
「────…おにいちゃん…!」
大切な家族だから。恐怖なんて吹き飛んだ。
一護は近くにあったバッドを掴むと、声を上げながら虚に突っ込んで行った。
「あああああああ」
だが一瞬にして吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「げほっ、は…っ」
持っていたバッドは無残に折れ、言葉も出ない。
その間に一護の目の前まで距離を詰めていた虚が、遊子を握る腕を振り上げた。
ドン
あと少しという所で、朝陽が虚の腕を斬り裂いた。
「アアアアアアア」
力の入らなくなった手から離れて、宙を舞う遊子を一護が抱き締めた。
「遊子!大丈夫か、おい!?」
頭から血を流して気を失った彼女は、一向に起きる気配がない。
「大丈夫だ!アンタの家族はまだ誰も、虚に魂を喰われちゃいねぇよ!!」
「誰も…?」
「ああ、誰もだ。家の中にいるおっさんも、アンタの妹達もだ」
「ちょ…っ、ちょっとまてよ!「虚」ってのは魂を食うために人を襲ったんじゃなかったかよ!?それじゃ、あいつは何の為にウチの連中を…」
「虚はよ、より霊的濃度の高い魂を求めてウロウロしている。だから無関係な人間達を襲う事はよくあるんだ」
「………どういう………」
「死神が見えて、鬼道も自分で破りやがるくらいに霊的濃度が高い人間(ヤツ)なんて聞いた事も見た事もねぇ…だからあの虚の狙いはきっと───アンタだ!」
告げられた事実は一護の胸に深く突き刺さる。
「…ちょっと待てよ…俺を狙って来ただと…?それじゃ、これは俺のせいだってことか…?親父がそこで死にかけてんのも…夏梨や遊子が血だらけになってんのも…全部…」
自分のせいで招いてしまった家族に迫る死。
「ちげぇよ!!これは誰のせいでもねぇんだッ!!これは────」
ゴォン!!
背後からの攻撃に気付かず、朝陽は虚に吹き飛ばされて壁に頭から激突した。
「…死神…!」
「バアアアアアアア」
「…いいかげんに……しやがれ…!!」
一護はゆらりと立ち上がると、虚の前に立ちはだかった。
「よォ…お前…俺の魂が欲しいんだろ……?だったら俺とサシで勝負しろ!!他の連中は関係ねェ!!俺を殺して奪ってみろよ!!」
それを聞き入れたかのように、虚は一護に向かって彼の魂を喰らおうと大口を開けて襲い掛かった。
しかしその牙は一護には届かなかった。
真っ赤な鮮血が舞う。
「────な……死神!!」
一護の代わに、間に飛び出したルキア虚に喰らいつかれた。
ーー