蓮和物語
□第3話
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霊の消えた光る穴から、2匹の地獄蝶が舞い上がる。
「………ど……どうなったんだ?今の奴…」
一護の問に刀を鞘に収めたルキアが答える。
「ソウル・ソサエティに送ったのだ。「魂葬」と言う。貴様らの言葉では「成仏」と言ったかな。死神の仕事のうちの1つだ。信じる気になったかどうかは……訊くまでもないようだな」
一護の瞳に映っていた出来事が、ルキア達が死神である事を物語っていた。あんなものを、間近で見せられては信じざるを得ない。
「貴様の様な短慮な餓鬼にも得心が行くよう、易しく図解してやる。黙って聞け」
ルキアは懐に片方の手を入れ、片方の手の指を2本立てた。
「いいか、この世には2種類の魂魄がある。1つは「整(プラス)」と呼ばれる通常の霊。貴様等が普段目にしている“ユウレイ“というやつは全てこれだと断言していい。そして今一つが、「虚(ホロウ)」と呼ばれ生者・死者の別無く襲って魂を喰らう。所謂“悪霊“だ。ここまでで何か質問はあるか?」
ルキアが持っているスケッチブックに描かれているのは、まるで子供のイラスト。思わず一護も朝陽も訊ねた。
「えっーと、とりあえずオマエの絵が異常にヘタな理由から聞こうか」
「それは俺も聞きてェ」
ルキアは黙って、一護の顔にマジックで先がクルンと回った髭を落書きし、朝陽の頭をスケッチブックで叩く。
「ああッ!!」
「いでェ!!」
「畜生!!こっちが動けないのをいいことに〜!」
「説明を続けるぞ。男爵(バロン)閣下」
気を取り直して、ルキアは説明を続ける。
「我々、死神の仕事2つ。1つは「整」の霊を先の「魂葬」で尸魂界へ導くこと。そして2つ目が虚を昇華・滅却する事だ。今回の私達の任務はこれにあたる」
再びスケッチブックで説明するが、絵が下手くそなのはもうどうでもいい。一護には1つ気になる事があった。床で髭の落書きを擦り落としながら問う。
「……?ちょっとまて。オマエらがその任務でここに来たって事は、その「虚」ってのは今この近くにいるってコトか?」
「そうなるな」
余りにも冷静に言葉を返して来るルキアに一護は怒鳴る。
「バッ…バカかてめぇら!?じゃあこんなトコ、ウロウロしてねぇで、さっさとソイツ片付けに行けよ!」
「イヤ…それが…先程から、どういうわけかそいつの気配を全く感じなくなってしまったのだ…」
「な……何だよソレ、んじゃてめぇは感じねぇのか!?」
一護は勢いよく視線を朝陽に向けた。
「ん?俺は、その虚とかの気配感知ってゆーやつが苦手でよ。全くわからねぇんだな」
「おいおいおい!どいういう…」
ウオオオオオオンン
突如聞こえた猛獣の唸り声の様な音に、一護の動きは停止し、朝陽は眉を顰める。
「(───な……なんだ…?今の…)」
「(今のは間違いなく虚の声。けど、ルキアが反応しねぇってコトは違うのか!?)」
ーー