蓮和物語
□第3話
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血痕が飛び散る。何かが砕けるような音がした。
「………近く……濃い魂………近くにある…」
ゴトン。と血塗れの少女の頭が落ちた。
ルキアと朝陽は少年─一護に、死神について説明をした。
話を腕を組んで黙って聞いていた彼は、口を開いた。
「…そうか、つまりあんた達は死神で…その「ソウル・ソサエティ」という所からはるばる、悪霊退治にやってきたってワケか。よし!信じよう!」
と、そう言ったものの何処から引っ張り出してきたのか、ご丁寧に【ノリツッコミ時以外使用不可】の注意書きが張られた、卓袱台を引っ繰り返す。
「…って信じられるか、ボケェ!!」
「貴様…幽霊が見えるくせに、死神の存在は信じぬと言うのか!」
「あたりめーだ。生憎今まで死神は1回も見たことがねーんだよ。目に見えないモンは信じない主義なんでね。親父には見えてなかったし、テメー等が人間じゃねぇってトコまでは認めてやる。ただし死神ゴッコはよそでやれ。わかったなクソガキ」
そう言ってルキアの頭を掌で朝陽に向かってぐいっと押す。
「オメー、コイツの保護者だろ?早く連れて帰って…」
「ほざきおったな…」
「あ?」
「クソガキ」の単語が頭に来たルキアの小さな呟きに首を傾げたその時、
「縛道の一!塞!!」
「あ」
「!」
刹那、手を後ろで拘束された様な体制のまま、身体の自由が奪われた。
「いててててぇッ!!て…ッ、てめえ…何しやがった…!」
「フフ…動けまい!」
ルキアはそう言って、倒れた一護を踏み付ける。
「こいつは「鬼道」と言ってな、死神にしか使えぬ高度な呪術だ!私はこう見えても貴様の10倍近くは生きておるのだ、それを糞餓鬼だと?本来なら貴様のような輩は殺してやるのだが、一応霊法で指令外の人間は殺してはならぬ事になっておるのでな。そうして動きを封じるだけで勘弁してやる。感謝しろ、糞餓鬼」
嫌味たっぷりに言われた「糞餓鬼」。一護は青筋を立てて彼女を睨み付けた。
「く…!!コノヤロウ…」
「それから──…」
「…!」
一護は目を見開いた。
鋭い目付きのルキアが、腰に差していた真剣を鞘から抜いたからだ。
彼女を止めることも、平然とその様子を眺める朝陽に助けを乞う事も、間に合わない距離。その上、先程「指令外の人間は殺さない」と言ったばかりではないか。
「ちょっ…」
ドン
向けられたのは切っ先では無く、柄の裏。その柄が落とされたのは一護では無く、彼に取り憑いていた霊の額。
「な…?」
「い…嫌です。私は…地獄へはまだ、行きたくない…!」
その表情は恐怖そのもの。怯えて目に涙まで貯めている。
そんな彼に朝陽は笑顔で語り掛ける。
「心配すんなって。アンタの行く所は地獄なんかじゃねぇ!!尸魂界だ!!地獄とは違ってな、いい所だぞ!」
ルキアが霊の額からゆっくりと刀の柄を上げれば、「死生」の印が押されており、床に現れた光る穴に消える様にして、尸魂界へと魂葬された。
ーー