蓮和物語

□第3話
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空座町 午前2時23分 金曜日

三日月の光に照らされた漆黒の地獄蝶が、ヒラヒラと舞っている。

地獄蝶と同じ、漆黒の死覇装に身を包んだ少女は、書状をバラッと開いて呟く。

「この辺りか…──成程…強い魄動を感じる。」

「えぇ!?俺には分かんねーんだけど…?」

「たわけ!貴様の霊圧探知能力はどうなっておるのだ!」

「どうなっておるのだって…こうなっておるのだ!」

「ふざけるな!…全く…とにかく私に付いて来い、いいな!朝陽!!」

「はいはい、わかりましたよーだ。ルキアさん」

共に現世駐在任務を遂行する、朽木ルキアと西島朝陽は月明かり美しい夜の空を蹴った。



斯くて刃は振り下ろされる。



「んで、ルキアさんよォ。こっちの方に何かあるのか?」

「そんなもの、虚に決まっておるだろう!!」

「へいへい。いちいち怒鳴んなくていいよ、アンタも疲れるだろ」

「貴様のお陰でな!!」

ルキアは溜息を付きながらとある家を指差した。【黒崎医院】と書かれた看板が掛けられている。

「あそこだ。行くぞ!」

「おう」










ルキアに続いて、朝陽も壁を通り抜けた瞬間、入った部屋の中に居たオレンジ髪の少年と目が合った気がした。

いや、気のせいなんかでは無い。確かに目が合った。

「……な…」

「!」

それに気付いていないルキアは、静かに床に降り、未だに少年と見つめ合う朝陽を置いて歩みを進める。

「近い…!」

そう呟いた直後、

「近い…!じゃあるか、ボケェ!!」

ルキアは少年に蹴飛ばされた。

宙を一回転して床に倒れ込んだ彼女は疑問符を幾つも浮かべ、戸惑いと困惑と疑問が混ざった表情をしている。

もちろん朝陽も。

何故、見えている?何故、触れれる?

彼等がそんな事を思っているなんて知る由もない少年は、倒れたままのルキアを指差して怒鳴る。

「ズイブン堂々とした泥棒じゃねぇか。あァ!?近い…!てのはアレか!金庫が近いとかどういう、アレか!!」

「き…貴様…私等の姿が見えるのか…?ていうか今、蹴り…」

床から顔を上げたルキアの言葉に、少年は怪訝な表情を浮かべた。

「あ?何ワケのわかんねぇこと、言ってやがんだ。そんなもん見えるに…」

決まってんだろ。と言葉は続かず、突如現れた男にジャンプを付けた両膝蹴りで背中を攻撃される。

「うるせぇぞ一護!2階でバタバタすんなァ!!」

「ゴフッ」

続いて少年が男の顔面に蹴りを入れる。

「やかましい!これがバタバタせずにいられるか!!」

「ナイスパキ」

そしてルキアと朝陽を指差して、攻撃体制の彼に訊ねる様に言う。

「見ろコイツ等を!この家のセキュリティはどうなってんだ!?」

「ん?見ろって…何を見るんだ」

キョトンとして頬に指を添える男。

「───あ?何って、このサムライ姿の…」

「無駄だ」

青筋を立てて説明する少年の言葉を、ルキアが静かに遮った。

「常人に私達の姿を見る事などできん。私達は──…“死神“だ。」

振り返ると、起き上がった彼女が表情を険しくして立っていた。












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