銀魂

□第二訓
1ページ/2ページ














「知るかボケェェェ!!金がねーなら、腎臓なり金玉なり乳なり売って、金つくらんかい、クソッたりゃー!!」

「家賃如きでうるせーよウンコババア!!こないだ、アレ…ビデオ直してやったろ!アレでチャラでいいだろが!!」

「おい、ばあちゃん!あたしの胸売れってか?ンなもんねーよ!寧ろ買いたいぐらいだよ!」

額に青筋を浮かべ、万事屋の玄関の前で怒鳴り散らしているのは、この家の大家であり、『スナックお登勢』を経営するお登勢。

「いいわけねーだろ!乳買う余裕があるなら、家賃を払いな!5ヶ月文の家賃だぞ!!大体、あのビデオまた壊れて『鬼平犯科帳』コンプリート失敗しちまったわい!!」

「諦めるな!きっと、また再放送するさ!諦めたらそこで試合終了なんだよ!」

「んなこたァいいから、家賃よこせっつーんだよ。この天然パーマメント!!チビ!!」

空き家だった、「スナックお登勢」の2階を借りて銀時と音葉で創設した「万事屋銀ちゃん」。

その家賃5ヶ月分もを滞納している2人に、お登勢は苦情を申し出ている。

「んだ、コラァ。お前に天然パーマの苦しみがわかるか!!」

「てめー、あたしよりちょこぉーっと身長が高いからって、調子のんじゃねーぞ!!」

掴み合いを始める銀時と音葉とお登勢。

丁度その時、買い物に出掛けていた新八が帰って来た。

目の前で繰り広げられる争いに、彼は呆れから来る大きな溜息を吐く。

「ハァ〜〜、また、やってんのか」


──早いもので僕がここに来て半月。フリーターから心機一転。あの男と女(の子)の元で働き始めた僕だが、万事屋なんていかがわしい商売そう儲かるわけもなく、じり貧の生活は相変わらずだった。──


「ちょっと…アンタらいい加減に」


──果たして、このままあの人達についていっていいものか──


ギャーギャー騒ぐ3人の仲裁をしようと口を開いた新八の目の前には、お登勢に投げられた銀時と彼にしがみついた音葉。

「「「ぎゃああああ!!」」」


──最近悩んでいる──












第二訓 【ペットは飼い主が責任持って最後まで面倒みましょう】












朝からの大騒動の後、新八は湯呑みにお茶を注ぎながら銀時に訊ねる。

「どーすんスか、生活費までひっぱがされて…今月の僕の給料、ちゃんと出るんでしょーね。頼みますよ、僕んちの家計だってキツいんだから」

「腎臓ってよォ。2つもあんの、なんか邪魔じゃない?」

「確かに…!2つもいらないよね、1個で充分…いや、寧ろ無くてもよくない?体軽くなるよ?」

「売らんぞォォ!!何恐ろしー事考えてんだ!!何なんだ、アンタら2人とも!!」

「カリカリすんなや。金はなァ、がっつく奴の所には、入ってこねーもんさ」

そう言った銀時はテレビを付けたが、電波が悪いのか、テレビそのものが悪いのか、どうも映りが悪い。

「ウチ、姉上が今度はスナックで働き始めて、寝る間も惜しんで頑張ってるんスよ…」

「あり?映りワリーな」

「叩いたら治る予感がする!」

「叩いてみるか」

「ちょっと!きーてんの?」

銀時と音葉は新八の話を無視して、ガンガンとテレビを叩く。

「オ……はいった」

「ほら!あたしの言う通りだったね!」

《──現在謎の生物は、新宿方面に向かっていると思われます。ご近所にお住まいの方は、速やかに避難することを…》

漸く治ったテレビ画面には、被害にあったばかりの街が映し出されていた。

「オイオイ、またターミナルから宇宙生物(エイリアン)侵入か?最近多いねェ」

「こないだも、新聞に書いてあったよね。宇宙生物(エイリアン)侵入」

「宇宙生物(エイリアン)より、今はどーやって生計立てるかの方が問題っスよ」

そんな話をしていると、万事屋のチャイムがピンポーンと鳴り響いた。

途端立ち上がって、玄関まで猛突進して行く銀時と音葉。

「「金なら、もうねーって言ってんだろーが(腐れ/うんこ)ババァ!!」」

またもや、お登勢による金の取り立てと思い込んだ2人は扉を蹴破るが、そこにいたのは黒い服を身に纏った見知らぬ男達。

「「あれ?」」

その中のグラサンを掛けた男の顔に、銀時達の足はクリーンヒットしている。

「局長ォォ!!」

「貴様等ァァ!!何をするかァァ!!」

「スンマセン」

「間違えました。出直して来ます」

「待てェェェ!!」

見なかった事にして、家の中に戻ろうとする2人の後頭部に拳銃が突き付けられた。

「貴様等が万事屋だな。我々と一緒に来てもらおう」

「…わりーな。知らねー人にはついていくなって、母ちゃんに言われてんだ」

「そうそう、物騒なモン持った人には特にさ」

「幕府(オカミ)の言う事には逆らうなとも教わらなかったか」

「オメーら幕府の…!?」

「入国管理局の者だ。アンタに仕事の依頼に来た、万事屋さん」

漸く立ち上がったグラサン男の片方の鼻の穴からは、鼻血が垂れていた。












万事屋の3人を乗せた、入国管理局の高級車は目的地へと向かっていた。

「入国管理局の長谷川泰三っていったら、天人の出入国の一切をとり締まってる幕府の重鎮スよ。そんなのが、一体何の用でしょう」

新八の言葉を聞いた銀時は、鼻糞をほじりながら長谷川に訊ねる。

「何の用ですか、おじさん」

「万事屋つったっけ?金さえ積めば、何でもやってくれる奴がいるってきいてさ、ちょっと仕事頼みたくてね」

「仕事だァ?幕府(テメーラ)仕事なんてしてたのか。街、見てみろ。天人どもが好き勝手やってるぜ」

「こりゃ、手厳しいね。俺達もやれることはやってんだがね。なんせ江戸がこれだけ進歩したのも奴らのお陰だから。おまけに地球(ココ)をエラク気に入ってるようだし、無下には扱えんだろ。既に幕府の中枢にも天人は根を張ってるしな。地球から奴らを追い出そうなんて夢はもう見んことだ。俺達にできることは、奴らとうまいこと共生していくことだけだよ」

「共生ねェ…」

「でさ、あたし等にどうしろって?」

「俺達もあんまり派手に動けん仕事でなァ。公にすると幕府の信用も落ちかねん。実はな、今幕府は外交上の問題で、国を左右する程の危機をむかえてるんだ。央国星の皇子が今地球(ココ)に滞在してるんだが、その皇子がちょっと問題抱えていてな…それが…」














連れてこられたのは『桜』と言うホテルの庭。そこに居たのは子猫を抱えて、頭から触覚を生やした央国星の皇子。

「余のペットがの〜、いなくなってしまったのじゃ。探し出して捕らえてくれんかのォ」

皇子からの依頼を聞いた途端3人は呆れて、帰る為に踵を返した。

「オイぃぃぃ!!ちょっと待てェェェ!!」

長谷川は慌てて銀時の肩をガシッと掴む。

「君ら万事屋だろ?何でもやる万事屋だろ?いや、わかるよ!わかるけどやって!頼むからやって!」

「うるせーな。グラサン叩き割るぞ、うすらハゲ」

「ああ、ハゲでいい!!ハゲでいいからやってくれ!!」

「あ、グラサンは割っちゃダメなんだ」

そのまま銀時の肩に腕を回し、耳打ちをする。

「ヤバイんだよ。あそこの国からは色々、金とかも借りてるから幕府」

「知らねーよ、そっちの問題だろ。ペットくらいで滅ぶ国なら、滅んだ方がいいわ」

「ペットぐらいとはなんじゃ。ペスは余の家族も同然ぞ」

「だったら自分で探してください。バカ皇子」

これでも一国の皇子。長谷川は咄嗟に音葉の口を手で覆うも、己の口からは「馬鹿」と零れる。

「オイぃぃ!!バカだけど皇子だから!!皇子なの!!」

「アンタ、まる聞こえですよ。大体そんな問題、アナタたちだけで解決できるでしょ」

「いや、それがダメなんだ。だってペットっつっても」

その時、ズドン、という破壊音と共にホテルの建物が崩れた。











ーー
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ