蓮和物語

□第8話
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神妙な顔した2人はもう何も答えるの事は無かく、沈黙が部屋を包み込む。
その沈黙を破ったのは由衣。

『ごめん。守る筈が巻き込んじゃった』

「……由衣は……」

織姫の言葉を遮るかの様にテッサイが入って来た。

「店長。「空紋」が…収斂を始めました……!」

「準備は?」

「万端!」

「よし。それじゃ行こうか」

浦原は3人に背を向けて、部屋を出ようとする。
それを織姫慌てた声を掛ける。

「ちょっ……ちょっと待ってください!アタシ達まだ……」

「着いてきますか?」

「……え……?」

「見せて差し上げますよ。自分で確かめるといい。これから君達の踏み入れる世界を」

運命の歯車によって歩く事になったその道の向こうにいる。

「君達の戦うべき、敵をね」

訳者は揃った。

彼等はどう動いていくのか。

それが何をもたらすのか

それを知るのは

果たしているのだろうか。











同じ頃。
一護と石田は邂逅していた。
途端に空の亀裂が1箇所に集まっていき、そこに虚も集まって来た。
勝負を持ち掛けた石田は虚を目掛けて矢を放つ。

「止せ石田。あれだけの数だ!!戦い方を考えてから……」

「何だ怖いのか黒崎」

「あァ!?」

彼の放った矢が虚の仮面を砕く。

「怖いならここで見物してるといい!この勝負は僕の勝ちだ!!」

石田は階段を走って駆け上がる。

「こっちだ虚ども!!最後の滅却師……石田雨竜が相手する!!」

その言葉に一護はひっかかりを覚えた。

「最後の滅却師……?あいつ何言って……」

「……滅亡したのだ。200年前に滅却師は」

「な……!?」

ルキアは先程浦原商店で聞いた話。
死神の所為で招いたこの事件を、今は死神であっても本来人間である一護に話していいのか。
迷いはあったがルキアは話した。

「全ての滅却師の生き残りは死神を憎んでいる
その憎しみの源はその200年前の滅亡にある

200年前滅却師は……死神達の手によって滅亡したのだ……!」

それは死神達にとっても苦渋の選択であった。

「……それ以外に無かった。この世界の崩壊を防ぐためには」

尸魂界では死神の位階にいる者を「調整者(バランサー)」と呼ぶ事がある。
尸魂界と現世の魂魄の数は常に一定にしなければならず、それを維持するのが死神の仕事である。
尸魂界から放たれた魂は現世で生物として生まれ、現世で死した魂は死神の手で尸魂界へ還っていく。
それは虚とて同じ事。
しかし滅却師に殺られた虚は、魂を完全に消滅させられてしまうので尸魂界に還える事ができない。
その結果魂魄の量は現世に傾くようになり、尸魂界が現世に流れ込んでしまう。

それこそが世界の崩壊。

死神は滅却師に仕事を任せるようにと訴えかけを続けたが全く受け入れようとはしなかった。
そして世界は崩壊寸前の所までいってしまったので、仕方なく滅却師殲滅の命を下す事になってしまった。

これが滅却師滅亡の真実。

話を聞いた一護は石田を追いかける。
その間彼の頭の中ではルキアの言葉がグルグルと回る。

「貴様はこれを死神の傲慢だと断ずるか?」

「……そんなのよくわかんねーよ……ちくしょうめ……だけど……」










石田は指が血に塗れても弓を引き続けた。
虚が1匹倒れても2倍も3倍もの虚が集まってきて、彼を囲む。

──クソ……ッ滅却しても滅却しても数が減らない…………師匠……ッ──

「石田ァーーーーーっ!!!」

一護が叫び声をあげながら、虚を蹴散らす様に倒してこちらへ向かってくる。
名前を呼ばれた石田は振り向いてその光景に絶句する。

──く……黒崎か……!?な……何てムチャクチャな倒し方だ……!!
それが僕に「戦い方を考えろ」とか言った人間の戦い方か!!──


「だっしゃァ!!!石田ーーーァ!!!」

倒され積み重なった虚の山の頂上へ立った。

「聞いたぜ!てめーの「戦う理由」!!」

「──……!」

「死神側が正しいとか滅却師側が正しいとかそんな事俺にはわかんねーし言うつもりもねぇ!
だけどいっこだけわかる事がある!!
石田!てめーのやり方は……」

「昔話だよ」

「……あ?」

吠える一護は素っ気なくに遮られ、怪訝な表情で石田を見下ろす。

「200年前の滅却師の滅亡なんて興味無いよ
そんなの師匠の話でしか聞いたことない、僕にとっちゃただの昔話さ
その滅亡話にしたって死神側が正しいと感じてたぐらいさ

目の前で師匠が死ぬまでは」

石田の言う「師匠」とは彼の祖父のこと。勿論、師匠と言うので祖父も滅却師である。

「人でも死神でも悲しい顔を見るのはわしゃつらい」

師匠は優しい人だった。

「師匠は滅却師の最後の生き残りの1人として死神達から厳しい監視を受けていた
だけど師匠はその死神達に対して滅却師の必要性を訴え続けた
力を合わせて戦う術を模索していた」

死神は平時尸魂界にいてどうしても現世の対応に遅れてしまう。
だからこそ常時現世で虚に目を光らせ俊敏に対処する滅却師の存在が必要なのだと、しかしその訴えを死神が受け入れる事はなく、そして事件は起こった。

「師匠は死んだ」

ある日、巨大な虚5体という死神の援護なくしては戦えない相手に、師匠は震える石田の前で1人で戦った。
そして師匠は命を落とした。
死神達が虚を倒しに来たのは、それから1時間後の事。それは師匠が虚と戦い始めて、二時間後の事だった。

「結局最後まで師匠の考えは死神達に届く事は無かった
もし死神達が師匠の考えを認めていたなら、滅却師の力を認めていたなら、もっと早く助けに来ていただろう、師匠は死なずに済んだだろう」

石田はずっと黙っている一護に言い放つ。

「わかるかい黒崎一護
僕は死神である君の前で絶対に滅却師の力を証明しなければならないんだ!

この戦い君達の手助けなど欲しくない
僕と君は「死神」と「滅却師」
何もかもが正反対である事はわかっている」

一護に背を向け、虚を見据える。

「僕は僕の力を証明するだけだ」

石田が話終えると一護は走り出し、彼の頭を蹴りつける。

「話が長げぇッ!!!」

「な……ななな何をする!!」

「うるせぇ!!」

蹴られ虚にぶつかり、抗議をするをする石田の話を無視してもう一度蹴りつける。

「納得いかねんだよ!話長過ぎて最初の方とか忘れちまったけどよ!
要するにオメーのセンセイの一番の望みってのは……死神に滅却師の力を認めさせる事じゃなくて!
死神と力合わせて戦う事だったんじゃねぇのかよ!?
だったら今それやんねーでいつやるんだよ!!」

石田の胸倉を掴みあげ、その勢いで立たせる。

「死神と滅却師は正反対!結構じゃねぇか!大人数相手の喧嘩なんてのは……背中合わせの方が上手くやれるモンだぜ!!」

石田は険しい表情をつくった。

「「背中合わせ」……?何だそれは?
共同戦線を張るということか?滅却師と死神が!?」

「それ以外の意味に取れんのかよ!?」

「無茶をいうな滅却師と死神が力を合わせるなんて……」

「まだそんな事言ってんのかよ!?」

一護は石田の肩を掴み、前に引く。
その肩を台にして飛びかかり、彼の背後の虚を斬った。












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