蓮和物語

□第7話
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「まったくもって信じ難し!!

自分達が何をしたかかわかってるのかお前ら!?」

ぶら霊の生放送スペシャルの騒ぎの翌日。
一護、由衣、ルキア、チャド、啓吾、水色、竜貴、織姫は校長室に呼び出されていた。

スクリーンに映像が流し出された。
必死に観音寺を止めようと、撮影現場に飛び出す一護。

「これを見ろ!!
昨日我が町で撮影された生放送のTV番組で全国に流れた映像だ!!全・国・に!!」

一護は筋肉が自慢の体育教師である鍵根に責め寄られる。

「どうだ?黒崎
これを見て何か言う事はないか?んん?」

「……俺によく似てますね」

「正真正銘お前だ馬鹿者!!」

鍵根は机をバンっと叩いた。

「生き別れの双子の兄です
まさかこんな形で再開する事になろうとは、思いもよらない」

「お前……本気で教師をなめとるようだな……
この映像が流れた事でお前がどれ程我が校の恥を晒したかわかって……」

「鍵根先生」

「なんだ有沢」

鍵根の言葉を竜貴が遮り、彼は不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。

「黒崎君や朽木さんはTVに映ってたからここに呼ばれたのはわかりますけど
あたしと井上さんは呼ばれる理由ないと思います!!」

「だって……お前らも一緒にいたんだろ?」

「たまたまです!
あたし達は行く途中で黒崎さんに誘われた朽木さんと会っただけで無関係です!」

「うそだぁ!俺、井上さんと有沢を誘ったじゃん!!」

「信用しないでください。彼は妄想癖があるので」

「たつきてめぇ……自分達だけ助かろうってのか……」

竜貴は一護にアッカンベーをして、ドアに手を掛けた。

「そういうわけなんであたし達は教室に戻らせてもらいます!行くよ織姫!」

「あっ!じゃあ俺も!」

啓吾がそれに便乗して帰ろうとすると、鍵根にガシッと掴まれる。

「お前は駄目だ」

「何でスか?俺と一護一緒にいただけっスよ!?」

「一緒にいたからだ!黒崎を止めなかったお前も同罪だ!!」

「横暴だーーー!!」

啓吾が叫ぶ中、ルキアが申し訳無さそうに口を開いた。

「すみません……それもこれも全て私が……黒崎君を止めきれなかったせいなんです……あの時一番黒崎君の近くにいたのは私と黒崎さん……」

『ん?あたし?あたしは───』

「一番近くにいた私は飛び出していく黒崎君を止めなければと、柄もなく声を張り上げたりもしたのですが……
黒崎君はそんな私の声に耳を貸すことなく」

「あ……ああっ!泣くな朽木!!」

演技であるが、はらりと涙を流すルキアに鍵根は焦り出した。

「わかったわかったお前は悪くない!悪いのは全部黒崎だ!そうだな!?」

「ええ……黒崎君はどうなっても構いませんから私だけは……」

鍵根がルキアの話に夢中になっている間に、一護達はそーっと窓から出ようとしていた。

「コラ待てお前らぁ!!!」

鍵根が気付いた時には既に遅く、全員は駆け出した。

「にっ……逃げたらどうなるか分かってんのかお前ら!?停学にするぞ!停学に……──」

一護達に怒号を飛ばしながらルキアを振り返ると、そこに彼女はいなかった。

「……とか言ってる間に朽木もいなくなってるしーーー!!!」






無事に校長室からの脱出に成功したメンバーは再び集合して、教室に向かっていた。

『やぁ〜助かった助かった』

「いやーーーーうまく逃げられたなー
めでたしめでたし♡
それもこれもぜーーんぶ朽木さんのおかげっ♡」

「やだそんな事……」

「バカ褒めんなよ
こいつ俺だけ売ろうとしたんだぞ」

「でもその朽木さんのおかげであんたも逃げられたんでしょ」

「そうですわあれは演技!お友達の黒崎君を売る様なこと私がする訳ないじゃありませんか」

ルキアが一護と由衣の2人だけに見えるように悪戯な笑顔を見せた。

「……ヤロウ……」

『あはは。ルキアらしい』















知らなかった。


思いもしなかった。


この当たり前の日常が、変わろうとしている事を。


あの夜の出来事が、あの映像が。


皆の運命を大きく変えた事を。


まだ誰も知らない。


運命の歯車は知らない間にクルクルと回り始めた。









学生の本業は勉学である。

学生の宿命はテストである。




ぶら霊の生放送スペシャルから約1週間後。
空座第一高校は丁度期末テストを終えたところだった。
勉強とテストから解放された生徒達は歓喜の声を上げた。

「終わったァーーー!!そして死んだァーーー!!」

「駄目だったみたいだね。まぁ僕もだけど」

啓吾は泣きながら机に突っ伏して、その横で水色も疲れた表情をしている。

「気にすんな!
期末テストなんて人生においてさしたる意味をもたねぇ!」

「よく言った!それでこそ一護ォ!!
馬鹿同士この悲しみを分かち合おうぜ!!」

「……まァそういう台詞は結果が出てから言った方がいいね」

「どういう意味だよ水色?」

「はい。これ一護の中間の時の順位表」

胡散臭気に水色が手渡した紙に目を通す。

「あのなぁこんなもん学年の上位50位しかのらねぇだろうが
こんなもんに一護に載ってるわけ───ねぇ……」

啓吾の目がある1点で止まった。

【18 黒崎一護】

啓吾は叫んだ。

「ニ゛ュ゛ーーーーーッ

じゅ……じゅじゅじゅじゅうはちい!?
ががくがく学年で18番目!?
1学年全322命中18番目の成績って事っすか!?」

涙を目に溜めて一護に詰め寄る。

「ウソだぁ!なんでお前がそんなトコにいるんだよ!?」

「帰宅部ですることねぇから家で勉強してんだよ」

「することないわけないだろ!!散々遊びにさそったじゃねぇか!!
そうか!度々俺の誘いを断ってたのにはこういう裏があったってワケか!!

俺達が阿呆のように外で遊び倒している間お前は家に篭って黙々と勉学に勤しんでたって訳ですかい!
この変質者!!ガリ勉野郎!!

そんな君にはこのガリ勉眼鏡をプレゼントだ!!」

「いらねぇよ」

瓶底眼鏡を付けて詰め寄って来る啓吾に鉄拳を落とした。
そして、騒ぐ啓吾を放ったらかしにして水色と話をする。

「それにしても一護ってちゃんと勉強してるんだねぇ」

「まあな、この目立つ頭だと色々面倒なんだよ実際
いくら地毛だっつっても上級生には嫌でも喧嘩売られるし、教員には嫌でも目ェつけられる
駄目なんだよそういうの俺も由衣も」

今では見慣れたが、一護と由衣の2人の容姿は勘違いされやすい。
実際水色も彼等に初めてあった時は驚いた。

「俺達気ィ短いから喧嘩売られたらつい買っちゃうし。まぁ由衣は俺程でもねぇか……
教員にイチャモンつけられたら反抗しちまう、そしたらまたそれを理由に素行が悪いだとかで教員が絡んでくる
そういうのが鬱陶しいから成績あげてんだ

取り敢えず教員連中ってのは成績さえ良けりゃ何も言ってこねぇからな
その為だよ。勉強すんのは」

「そっか……なんか……いろいろ大変なんだね一護も由衣も」

「別にもう慣れたよ」

一護は先生の事を「教員」としか呼ばない。
それは冷たく淋しいものである。
彼等はその容姿のせいで酷い差別を受けて来た。




人は何故自分と少し違う所があるだけで差別してしまうのか。

例えば足が沢山ある虫を見て「きもい」と言う。

それは私達人間は足が2本だけだから。

例えば羽根がある鳥を見て「きもい」と言う。

それは私達人間に羽根がないから。

例えば肌が黒い人間を見て「きもい」と言う。

それは私達日本人は黄色人種だから。


彼等の場合それに当てはまる。
髪や瞳の色が違うから「こいつ等は駄目」だと決めつけらるのだ。













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