蓮和物語

□第6話
1ページ/5ページ











──俺は占いってやつが嫌いだ──


一護は占いが嫌いである。
占いに限らず風水とか霊媒とか目に見えないもので他人から金を取る商売は嫌いだ。

だから本に今週の蟹座は最悪と書いてあってもそんなのは全っ然気にしない。

なぜならこれっぽっちも信じないから。

たとえ今週に入ってから何も無い所で3回転び、靴紐が2回切れ、財布を1回落としてもである。

そしてたとえ────

《それでは登場して頂きましょう!
新世紀のカリスマ霊媒師!!地獄のメッセンジャー!!
ミスター・ドン・観音寺!!!》

《スピリッツ・アー・オールウェイズ・ウィズ・ユー!!(霊はいつも貴方と共に)
ボハハハハーーーーッ!!!》

「「『ボハハハハーーーーッ!!!』」」

大ッ嫌いな心霊番組に家族がハマってしまっていたとしても。

一心と遊子そして由衣までもがテレビの前を占領して、両腕をクロスさせテレビに映る「ドン・観音寺」と同じポーズを取る。

それを見た一護の眉間の皺がいつも以上に深くなる。

「……何してんだ?」

「何ってお兄ちゃん「ぶら霊」知らないの!?」

『えっとなんだっけ?ぶら、ぶらり……』

「「ぶらり霊場突撃の旅」カリスマ霊媒師「ドン・観音寺」!!今すごい人気なんだよ!」

「いやそいつは知ってるよ
じゃなくてさっきの変なポーズ……」

「『ボハハハハーーーーッ!!!』」

由衣達が見ている「ぶらり霊場突撃の旅」は通称「ぶら霊」。
毎週水曜日の夜8時からというゴールデンタイムにやっていて、一護からすればインチキ臭い心霊番組だ。
そして何故か今年の春に始まったばかりなのに大人気で、あっという間に視聴率が25%を超える超人気番組となったのだ。
メインは「新世紀のカリスマ霊媒師」の観音寺ミサオ丸ことドン・観音寺。
この番組でデビューした霊能力者で今や女子中高生の間ではそこらのアイドルより人気がある。

「スメルズ・ライク・バッド・スピリッツ……!!」

因みにこれが決め台詞。

「かっこいいー!!」

──カッコいいのかアレ……──

一護は呆れた表情を浮かべた。

「ね!すごいよねお兄ちゃん!この人絶対ホント見えてるよね!」

「あ?知らねーよ、そんなこ……」

「お兄ちゃん!」

遊子は一護に食って掛かっている。
一護と同じテーブルでジュースを啜っていた夏梨は兄を見上げていた。

「ん?俺の分のジュースはもうねぇぞ」

「え?あ、イヤ……別に……」

そう言ってそっぽ向く夏梨に怪訝な表情を浮かべ、問い掛ける。

「お前は見ねーのか?あれ」

「あー、あたし興味なし
遊子のアレは憧れでしょ
うちらの兄妹であの子だけヒゲに似て霊力薄いから、どうしてもああいうのに憧れちゃうのよ
その証拠にヒゲも一生懸命見てんじゃん?

あたしは一兄と美衣奈と同じぐらい見えてるからそーゆーのは全然ないっす!」

「そーか……」

夏梨は本人の言う通り一護と美衣奈と同じくらい幽霊が見える。つまり虚も。
という事は死神が見えている可能性もある。
先日の墓参りのさいに死神となった一護と由衣の姿を見た可能性もあるのだ。

「……ん?じゃあ由衣はなんでアレ楽しそうに見てんだ?」

「…………美衣奈は楽しめたら何でもいいってトコあるし、それじゃない?」

「あー……なるほどな……でもよォ」

怪訝な表情で由衣に視線を注いだ時、その横で一生懸命にテレビを見ていた遊子と共に大声を上げる。

「『あーーーーッ!!!』」

「何だよ?デカイ声出すなよ由衣、遊子!!」

「じ……次週の「ぶら霊」が……!!空座町に……!!」

「……は?」

《次週は緊急生放送スペシャル!!東京・空座町の廃屋病院に突・撃!!》

──そらみろ本当に最悪なのは来週じゃねぇか──

《それではグッナイベイビー!!ボハハハハーーーーッ!!!》

──グッナイベイビー畜生め──













「なぁ占い好きか?」

『占い?あたしはどっちでもいいかな』

一護は珍しく席でのほほんとしている由衣に聞いた。

「じゃあ占いの中でも星座占い信じるか?」

『信じない』

「なんで?」

『んー……うら……』

授業と授業の合間の休憩時間に聞いたのが悪かったかもしれない。
丁度チャイムがなってしまい、偶然だろうが上手いことはぐらかされた。



そんな昔の事を思い出した一護はベッドに転がって漫画を読む由衣に問い掛けた。

「なぁ由衣」

『ん?』

「星座占い信じるか?」

そう言ってさっき読んでいた雑誌を手渡すと、由衣は漫画から目を離してそれを受け取った。

『信じない』

「なんで?」

『んー……占いなんて信じてたら人生楽しくない気がするんだ』

「なんで?」

『な、なんでって……占い見て「あーあ最悪だ」なんて言って1週間過ごすより、見ないでなぁんにも知らずに1週間過ごす方が楽しい気がする』

「……ふぅん」

答えを返すにも返し方が分からず沈黙が流れる。
いつの間にか漫画に目を落とした由衣にもう一度問いかける。

「なんでぶら霊見てあんなに楽しんでんだよ?お前幽霊が見えるどころか死神だろ?」

『え?理由なんてないさ
見てて楽しいんだから楽しむんだ♪』

「……」

本当に楽しそうに笑う由衣に理由もよく分からない溜息が出た。

『一護も一緒に見……』

「見るか!断じて見ねぇ!」

『じゃあ一護も一緒に来……』

「行くか!断じて行かねぇ!」

『いいじゃないか!ちょっとぐらい付き合ってくれても!』

「よくねぇ!行くなら1人で勝手に行け!」

『一護の人でなし!!オレンジ頭!!』

「誰が人でなしだ!!」

『だいたい一護が……』

「うるさいではないか!貴様ら静かにせんか!!」

止まる事を知らない言い争いに耐えられなくなり、押し入れから両耳を塞いだルキアが出て来た。

『ルキアー!』

「おっ!?」

ガバッと抱き着くがルキアはしっかりと受け止めてくれた。

『ルキアは一緒に行こうよ!』

「どこへ行くのだ」

『来週の水曜日の「ぶら霊」の生放送!』

「おお!それは何の祭りだ!」

「……祭り?」

『ぶら霊!!』

「よく分からんが楽しそうだな!行こうではないか!」

『流石ルキアだ!』

嬉しさのあまりルキアの両手を握り、ぶんぶんとちぎれるのではないかと思う程激しく上下に降った。


その様子を見て一護は思った。


──わかんねーやつ──


何がだって?


勿論キャラの読めないところ。





ーー
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ