鋼×海賊
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広い海を2隻の船は進んでいた。
3人は航海術を持っていない為、何処かの島にも辿り着けず、ただただ広い海を風と波に任せて進んでいる。
そしてお腹は減る一方。
「あーー、腹減ったーー」
『ご飯食べたいー』
「だいたいお前等が、航海術持ってねェってのはおかしいんじゃねェか?クレアに関しては1人で、その船であの島まで来たんだろ?」
「おかしくねェよ、漂流してたんだもん。俺は」
『風と波任せに進んでたら偶々あの島に辿り着いたんだよ。そもそもあたしの国は内陸国だから海なんて初めて見たし』
「お前こそ海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったのかよ」
「俺はそもそも賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ。ある男を探しに取り敢えず海へ出たら、自分の村へも帰れなくなっちまったんだ」
だから仕方無く、海賊船を狙って生活費を稼いでいたと言う。
それを聞いたルフィとクレアは、核心を付く。
「『何だ、お前、迷子か』」
「その言い方はよせ!!」
ゾロはすかさず、ツッコミを入れた。
「全く…!航海もできねェなんて、海賊が聞いて呆れるぜ!」
『迷子に言われたかないね』
「ほっとけッ!!」
またもや核心を付かれ、怒鳴った。
「取り敢えず、これじゃ”偉大なる航路(グランドライン)”も目指し様がねェ。早ェとこ”航海士”を仲間に入れるべきだな」
「あと”コック”と”音楽家”とさァ…」
「んなモンあとでいいんだよ!!」
指折り数えるルフィに勢い良く怒鳴ったゾロ。
そして3人は、揃って空腹に倒れた。
「「腹へった」」
『おなかすいたー』
視界に入ったのは、広がる青い空を羽ばたく1匹の鳥。
「お、鳥だ」
『あ、ほんとだ』
「でけェな、わりと…」
少し考えたルフィはがばっと身を起こして、倒れたままの2人に言う。
「食おう!!あの鳥っ」
「?どうやって…」
「俺が捕まえて来る!任せろ!」
そう言って腕を伸ばし、船の帆を吊るしている部分を掴む。
『ルフィ!ゴムゴムするんだよね!あたしも行きたい!!』
「おう!いいぞ、捕まれ!」
『やった!』
「ゴムゴムの…」
嬉しそうなクレアが、首元に手を回すとルフィはゴムの反動を使い、鳥に向かって飛び出した。
「ロケット!!!」
「なるほどね」
ゾロが2人の様子を見守っていると、ルフィの頭がパクッと鳥に咥えられた。
「はっ!」
『あっ!』
「は!?」
鳥は、彼に捕まっているクレア諸共飛んで行ってしまう。
「ぎゃーーーーっ、助けてーーーっ」
『食べられるーーーーっ!!』
「アホーーーーっ!!!」
ゾロは急いでオールを手に取り、船を漕ぐ。1人で2隻を動かす事は出来ない為、クレアの船はその場に放置するしか無い。
全力で2人を追っていると、水上から助けを求める声が聞こえて来た。
「おーーい、止まってくれェ!!」
「そこの船止まれェ!!」
こんな時に限って遭難者達。ゾロは船を漕ぐ事を止めずに、彼等に告げる。
「船は止めねェ!!勝手に乗り込め!!」
「「「な!!何ぃっ!!?」」」
猛スピードで水上を滑る様に進む小船に、遭難者3人は必死にしがみついて乗り込む。
そして自分達が”道化のバギー”の一味の者だと名乗り、「船を止めろ」とナイフを向けた。
「あァ?」
睨まれ、たっぷりとお仕置きをされた遭難者もとい海賊達はボロボロ。ゾロの代わりに小船を、えいさー、と漕いでいる。
「あなたが”海賊狩りのゾロ”さんだとはつゆ知らずっ!失礼しましたっ」
「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった。とにかく、真っ直ぐ漕げ。ルフィ(アイツ)がいるんだ。陸でも見えりゃ自力で下りるだろう。──で?海賊が何で海の真ん中で溺れてたんだ」
「そうだっ!!よく聞いてくれやした!!」
ゾロの問いに、海賊達は待ってましたと言わんばかりに身を乗り出して答える。
「あの女っ!!」
「そう、あの女が全て悪いっ!!!」
「しかも可愛いんだ。結構!!」
それは彼等が、商船を襲った帰りの事だった。
奪った宝を3人で満足気に眺めていると、1人が小船を発見した。
近付いてみると、オレンジ髪の女がぐったりと倒れているではないか。
何とか意識のあった女は顔を上げると苦しそうに、宝は幾らでもあるから水とパンを恵んで欲しいと要求した。
海賊達が宝の確認に女の船に乗り込んだ。
すると、弱り切っていた筈の女が彼等の船ごと宝を盗んでいった。しかも彼女の船の宝箱は空。
その上、女が発生を言い当てた小さな嵐に船は破壊され、溺れていた。
そして現在へ至るという。
「海を知り尽くしてるな、その女。航海士になってくれねェかな」
「あいつは絶対探し出して、ブッ殺す!!」
「それより、宝をまずどうする!」
「そうだぜ。このまま帰っちゃ、バギー船長に……!!」
先程から話の中に度々出てくる”バギー”と言う人物。ゾロは彼に付いて訊ねた。
「その、バギーってのは誰なんだ…!?」
すると、海賊は顔色を変えて言う。
「俺達の海賊船の頭ですよ。”道化のバギー”を知らねェんで?”悪魔の実シリーズ”のある実を食った男でね。恐ろしい人なんだ!!」
「………悪魔の実を…?」
港には船首が象の大きな船が停泊していが、町はがらんとしており、人のいる気配はない。
そんな中、
「待て貴様ァ〜〜〜っ!!」
「泥棒女ァ、海図を返せェーっ!!!」
息を切らせたオレンジ髪の女は、男3人から逃げていた。
「ハッ、ハッ。やっと手に入れた!”偉大なる航路(グランドライン)”の海図っ!!」
彼女は盗んだソレをぐっと握り締めて、走り続けた。
「バギー船長!港の空に何か見えます!」
「大砲で撃ち落とせ」
「はいっ!!」
この会話の直後、鳥に咥えられたルフィとそれに捕まるクレアに、大砲が撃たれた。
ドォォン!!
「おあーっ」
『んぎゃー!!』
2人は、そのまま真下の町へ真っ逆さまに落ちた。
その場所は丁度、逃げる泥棒女と追い掛ける男3人の間。
「うおおっ」
「きゃあ」
彼等は飛び退いたその場に座り込む。
「ひ…人が」
「空から降って来た!!!」
「何………?」
土埃が晴れて出て来たのは、ルフィと彼に抱えられて魂が抜け掛けているクレア。
「あーーー!!助かった!!おい、クレア生きてるか?」
『生きてるしっ!!勝手に殺さないでよね!!』
「なっはっはっはっはっは!良かった、良かった!!」
落ちて来た2人を見て、冷静に思考回路を巡らせた女は、あたかも知り合いの様にルフィ達に話し掛けると、
「お…!!親分達っ!!助けに来てくれたのね!?後は任せたわ!!」
走り去って行った。
「おい、女が逃げたぞ」
「追う必要はねェ!!親分達が、わざわざ残ってくれてる」
「成程…子分を庇ったって訳だな。お陰で追い回す手間が省けた」
「『?』」
訳のわからないまま、ルフィとクレアは剣を持った柄の悪い男達に囲まれた。
「なァ、親分っ!!あの海図は恐れ多くも海賊”道化のバギー”様の持ち物だ!!!」
「あ」
そう言った1人がルフィを殴った拍子に、麦わら帽子が飛ばされ宙を舞う。
刹那、
ゴッ!
「!!!」
男は顔面を殴り飛ばされた。
「俺の宝物に触るな」
ーー