鋼×海賊

□2page
1ページ/4ページ













広い海を2隻の船は進んでいた。

3人は航海術を持っていない為、何処かの島にも辿り着けず、ただただ広い海を風と波に任せて進んでいる。

そしてお腹は減る一方。

「あーー、腹減ったーー」

『ご飯食べたいー』

「だいたいお前等が、航海術持ってねェってのはおかしいんじゃねェか?クレアに関しては1人で、その船であの島まで来たんだろ?」

「おかしくねェよ、漂流してたんだもん。俺は」

『風と波任せに進んでたら偶々あの島に辿り着いたんだよ。そもそもあたしの国は内陸国だから海なんて初めて見たし』

「お前こそ海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったのかよ」

「俺はそもそも賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ。ある男を探しに取り敢えず海へ出たら、自分の村へも帰れなくなっちまったんだ」

だから仕方無く、海賊船を狙って生活費を稼いでいたと言う。

それを聞いたルフィとクレアは、核心を付く。

「『何だ、お前、迷子か』」

「その言い方はよせ!!」

ゾロはすかさず、ツッコミを入れた。

「全く…!航海もできねェなんて、海賊が聞いて呆れるぜ!」

『迷子に言われたかないね』

「ほっとけッ!!」

またもや核心を付かれ、怒鳴った。

「取り敢えず、これじゃ”偉大なる航路(グランドライン)”も目指し様がねェ。早ェとこ”航海士”を仲間に入れるべきだな」

「あと”コック”と”音楽家”とさァ…」

「んなモンあとでいいんだよ!!」

指折り数えるルフィに勢い良く怒鳴ったゾロ。

そして3人は、揃って空腹に倒れた。

「「腹へった」」

『おなかすいたー』

視界に入ったのは、広がる青い空を羽ばたく1匹の鳥。

「お、鳥だ」

『あ、ほんとだ』

「でけェな、わりと…」

少し考えたルフィはがばっと身を起こして、倒れたままの2人に言う。

「食おう!!あの鳥っ」

「?どうやって…」

「俺が捕まえて来る!任せろ!」

そう言って腕を伸ばし、船の帆を吊るしている部分を掴む。

『ルフィ!ゴムゴムするんだよね!あたしも行きたい!!』

「おう!いいぞ、捕まれ!」

『やった!』

「ゴムゴムの…」

嬉しそうなクレアが、首元に手を回すとルフィはゴムの反動を使い、鳥に向かって飛び出した。

「ロケット!!!」

「なるほどね」

ゾロが2人の様子を見守っていると、ルフィの頭がパクッと鳥に咥えられた。

「はっ!」

『あっ!』

「は!?」

鳥は、彼に捕まっているクレア諸共飛んで行ってしまう。

「ぎゃーーーーっ、助けてーーーっ」

『食べられるーーーーっ!!』

「アホーーーーっ!!!」

ゾロは急いでオールを手に取り、船を漕ぐ。1人で2隻を動かす事は出来ない為、クレアの船はその場に放置するしか無い。

全力で2人を追っていると、水上から助けを求める声が聞こえて来た。

「おーーい、止まってくれェ!!」

「そこの船止まれェ!!」

こんな時に限って遭難者達。ゾロは船を漕ぐ事を止めずに、彼等に告げる。

「船は止めねェ!!勝手に乗り込め!!」

「「「な!!何ぃっ!!?」」」

猛スピードで水上を滑る様に進む小船に、遭難者3人は必死にしがみついて乗り込む。

そして自分達が”道化のバギー”の一味の者だと名乗り、「船を止めろ」とナイフを向けた。

「あァ?」











睨まれ、たっぷりとお仕置きをされた遭難者もとい海賊達はボロボロ。ゾロの代わりに小船を、えいさー、と漕いでいる。

「あなたが”海賊狩りのゾロ”さんだとはつゆ知らずっ!失礼しましたっ」

「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった。とにかく、真っ直ぐ漕げ。ルフィ(アイツ)がいるんだ。陸でも見えりゃ自力で下りるだろう。──で?海賊が何で海の真ん中で溺れてたんだ」

「そうだっ!!よく聞いてくれやした!!」

ゾロの問いに、海賊達は待ってましたと言わんばかりに身を乗り出して答える。

「あの女っ!!」

「そう、あの女が全て悪いっ!!!」

「しかも可愛いんだ。結構!!」


それは彼等が、商船を襲った帰りの事だった。

奪った宝を3人で満足気に眺めていると、1人が小船を発見した。

近付いてみると、オレンジ髪の女がぐったりと倒れているではないか。

何とか意識のあった女は顔を上げると苦しそうに、宝は幾らでもあるから水とパンを恵んで欲しいと要求した。

海賊達が宝の確認に女の船に乗り込んだ。

すると、弱り切っていた筈の女が彼等の船ごと宝を盗んでいった。しかも彼女の船の宝箱は空。

その上、女が発生を言い当てた小さな嵐に船は破壊され、溺れていた。

そして現在へ至るという。


「海を知り尽くしてるな、その女。航海士になってくれねェかな」

「あいつは絶対探し出して、ブッ殺す!!」

「それより、宝をまずどうする!」

「そうだぜ。このまま帰っちゃ、バギー船長に……!!」

先程から話の中に度々出てくる”バギー”と言う人物。ゾロは彼に付いて訊ねた。

「その、バギーってのは誰なんだ…!?」

すると、海賊は顔色を変えて言う。

「俺達の海賊船の頭ですよ。”道化のバギー”を知らねェんで?”悪魔の実シリーズ”のある実を食った男でね。恐ろしい人なんだ!!」

「………悪魔の実を…?」











港には船首が象の大きな船が停泊していが、町はがらんとしており、人のいる気配はない。

そんな中、

「待て貴様ァ〜〜〜っ!!」

「泥棒女ァ、海図を返せェーっ!!!」

息を切らせたオレンジ髪の女は、男3人から逃げていた。

「ハッ、ハッ。やっと手に入れた!”偉大なる航路(グランドライン)”の海図っ!!」

彼女は盗んだソレをぐっと握り締めて、走り続けた。










「バギー船長!港の空に何か見えます!」

「大砲で撃ち落とせ」

「はいっ!!」

この会話の直後、鳥に咥えられたルフィとそれに捕まるクレアに、大砲が撃たれた。



ドォォン!!



「おあーっ」

『んぎゃー!!』

2人は、そのまま真下の町へ真っ逆さまに落ちた。

その場所は丁度、逃げる泥棒女と追い掛ける男3人の間。

「うおおっ」

「きゃあ」

彼等は飛び退いたその場に座り込む。

「ひ…人が」

「空から降って来た!!!」

「何………?」

土埃が晴れて出て来たのは、ルフィと彼に抱えられて魂が抜け掛けているクレア。

「あーーー!!助かった!!おい、クレア生きてるか?」

『生きてるしっ!!勝手に殺さないでよね!!』

「なっはっはっはっはっは!良かった、良かった!!」

落ちて来た2人を見て、冷静に思考回路を巡らせた女は、あたかも知り合いの様にルフィ達に話し掛けると、

「お…!!親分達っ!!助けに来てくれたのね!?後は任せたわ!!」

走り去って行った。

「おい、女が逃げたぞ」

「追う必要はねェ!!親分達が、わざわざ残ってくれてる」

「成程…子分を庇ったって訳だな。お陰で追い回す手間が省けた」

「『?』」

訳のわからないまま、ルフィとクレアは剣を持った柄の悪い男達に囲まれた。

「なァ、親分っ!!あの海図は恐れ多くも海賊”道化のバギー”様の持ち物だ!!!」

「あ」

そう言った1人がルフィを殴った拍子に、麦わら帽子が飛ばされ宙を舞う。

刹那、


ゴッ!


「!!!」

男は顔面を殴り飛ばされた。

「俺の宝物に触るな」















ーー
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ