BLEACH

□第5話
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「その傷で行くのか?」

『医者がいるわけじゃ、ないんだし……』

ゆっくりと歩く紀奈の頭に直接話しかける声。斬魄刀達だ。

「どっかで………」

『うるさいな、負けたんだから……黙っててよね
そこのおふたりさん……』

「でもその姿じゃ
一護が心配するだけよ」

上から下まで血まみれの姿。
赤い死覇装とはいえ、固まった血は赤黒くなり目立っている。
服の切れ目から除く傷口からは血がドクドクと流れている。

『…………確かに……ね』

そうして、尸魂界の死神達から拝借した包帯を傷口に巻き付ける。
それから一護の元へと歩いていった。

『い〜〜ちごっ!』

元気よく振舞って一護の肩をバシッと叩く。

「うおっ!!

紀奈か……焦った
つーかお前怪我してんじゃねェか」

そう言って紀奈の頬の傷をパシっと叩いた。

『いで!
怪我してんだよ!!』

「悪ィ悪ィついつい」

そう言って笑う一護の背中をバシッと叩いた時、側でもぞりと動く何か。

『うおっ!いたんだ!!』

「気付かねェお前もお前だな」

呆れる一護と状況把握に困る禿の死神。

「俺はいつまで死んだフリをしてたらいいんだよ」

『え?もしかしてお話の最中であたし話しかけちゃった?』

「「おう」」

半分、いや四分の一ほど申し訳なさそうに謝ると、一護と死神は笑って答えた。

「まぁでも岩鷲を探しに行くつもりだったけどな」

「行けよ」

「ああ」

知らない間に生まれた友情に紀奈は笑った。
敵同士で友情とはいないかもしれない。
でも、それは友情に近い「喧嘩するほど仲がいい」というものでも無い。
二人の間には新しい何かが芽生えていた。

「……ちょっと待て」

「行けよ」と言ったくせに何だよ。
そう思いながら振り向いた。

「1つ訊いてもいいか

オマエらの仲間で……一番強ぇのは誰だ?」

死神の真剣な眼差しに一護は数学の公式のように答えた。

「多分紀奈だ」

『一護……』

「それはない」そう言いたかった。
一護は自分の成長ぶりをわかっているのか……。

「紀奈……あんたか」

死神は紀奈事をじっと見、
そしてその瞳に訴えかけるように話した。

「……うちの隊長に気をつけな
うちの隊長は弱い奴には興味がねぇ
てめーの言うことが本当なら、狙われるのは間違いなく紀奈だ」

「……強いのか」

「会えばわかるさ

あの人の強さをてめーらの頭が理解できるまで、てめーらが生きていられればの話だがな」

それを聞いて心配そうな顔をする一護。
念のため名前を聞いておこう、もしもあった時のために。

「…………そいつの名前は」




──

瀞霊廷内を岩鷲を探して走り回る。

「くそーーーー……
一体どこまで逃げ回ってんだよあいつは……」

十一番隊第五席の座を持つさっきの死神。
うろ覚えの顔を思い浮かべながら走る。

「……つーかお前もう息あがってんぞ、大丈夫なのか?」

『ぜんぜんっへーきじゃん!』

怪我の事がバレたくなくて必死に誤魔化すが、失う血の量は多くなるばかりで包帯には血が滲んでいく。

だんだんと遅くなるペース。

「大丈夫じゃねーだろ、何があったんだよ」

そう言って手を引っ張り走る。

『戦ってたんだ
強くなるにはそうするしかないから
自分の斬魄刀達と』

ふにゃりと笑う。

「強くならなくたって紀奈はもう十分……」

『自分で言うのは変だけどあたし一護の先生だからさ
一護に超えられたくないプライドもあるし
それに、全部自分の手で守りたいからさ……』

一護の足が止まり、手を引かれていた紀奈は一護の背中に勢いでぶつかる。

『いでっ!!

なんでいきなりとまるのさ!!』

「俺が護るからお前は護られとけ」

照れ隠しなのか前を向いたまま紀奈の顔を見ずに言った。
その言葉に恥ずかしくなって一護をバシッと叩く。

「いで!!」

『そんな恥ずかしいこと言うなアホ!

……ありがとう
でも、あたしも強くなるからね』

一護の手を離し、先へ先へと足を進める。
なくなってきていた体力が戻ってきた様な気がした。



──

『……それにしてもさ見つかんないねガンジュ』

「そうだな!

あーーもーー腹たってきた!!」

いつまで走っていても岩鷲は見つからずにイライラしてきた。
イラつきすぎて二人は目一杯息を吸い込んだ。

「『オラァ/おーーい!!

どこだガンジューーーーーーー!!!

いるなら花火でも打ってアピールしやがれ/しろよ
この……ボ……ケ……』」

大きな声で岩鷲のことを呼ぶが、思い出したことが一つある。

「いたぞォオあ!!オレンジ髪の死神と赤い死覇装の死神だァ!!!」

「ぶっ殺せぇ!!」

路地であぶらをうっていた死神達に追いかけられる。
思い出したことは、自分達が追われる身であったことだ。

「ちくしょーー!!!」

『どこいってんのガンジュのやつー!!』

死神達に追われながらも岩鷲を探すのはやめなかった。
逃げ回っていたがだんだんと追ってくるのが鬱陶しくなって、彼等を倒した丁度その時。




ドパーーーーーン




空に綺麗な花火が上がった。

「おーーーなんだあっちかよ」

『上げるの遅いんだってガンジュのやつめ!』

そこへ向かって走っている途中にも大勢の死神達に追われてしまう。

「絶対お前トラブルメーカーだろ!」

『何でさ!』

「お前と一緒になってからこんなに追われてんだぞ!!
絶対そうだ紀奈はトラブルメーカーだ!」

そう言い張る一護に言い返そうと思ったが目の前は壁に迫っており、左に方向転換をする事になった。
勢いのついたスピードは中々おさまらずにいた。
草履でブレーキをかけやっと方向転換できたと思うが、目の前にいたのは死神達に追われた岩鷲だった。

「おっガンジュだ!」

『おーい!ガンジュー!!』

見つけた岩鷲に向かって大きく手を振る。

「なんでテメーらまでそんな追っかけられてんだよ!?
合流する意味ねーだろが!!

ああっ!手ェ振んなボケ!!
後ろの皆さんがテンション上げてらっしゃるじゃねーか!!」

騒ぐ岩鷲を無視して手を振ったまま無表情で突っ込む。

岩鷲は一護と紀奈の追っていた死神達を、二人は岩鷲の追っていた死神達の動きを止める。

「いくぜガンジュ!!紀奈!!伏せろォ!!」

周りを囲まれ逃げ場のなくなった3人。
一護が斬魄刀を抜いたため紀奈が岩鷲の頭を抑えしゃがませた。
その間に一護がある程度の死神を倒した。

「ああああああぶねーなこのやろ!!
いきなり剣ブン回しやがって!!
アホかてめーは!?」

あと少しで一護の斬魄刀が当たるところだった岩鷲は、一護に怒鳴り散らす。

「何ィ!?
ちゃんと「伏せろ!」って言っただろうが!!
しかも紀奈が頭抑えたろ!!」

「うるせぇ!!当たりそうなものは当たりそうなんだよ!!」

『結局当たってないじゃん』

揃うと必ず喧嘩腰になってしまう3人だったが、今はとりあえず落ち着くことが出来た。
なぜなら、ジリジリと攻め寄る死神達。

「……さてこっからどうするよ?

今のは不意打ちで何とかなったが……
ちょっとばかし強いトコ見せたからって素直に引いてくれるタマでもなさそうだぜ
こいつら」

岩鷲が分析していると死神達の集団が騒がしくなっていた。

「な……何しやがんだこのガキャあ!!」

「す……すいませんっ!!」

「てめーこっち来んな!」

他から見ているとただの集団虐めに見える光景だ。

「うわぁっ!!」

そして追い出されて出てきたのは若い死神。
3人の目の前にドサッと倒れ込む。

「こっから逃げるラクな作戦を思いついたぜ……」

「気が合うな俺もだ」

『え?』

「は……はい?」

とぼけた顔をするその死神と紀奈。
一護と岩鷲はその死神を見下ろしていた。










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