蓮和物語
□第12話
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一護と十一番隊第三席斑目一角との戦いを傍観していた##NAME7##は##NAME8##に質問をする。
「あのオレンジ頭何番隊の奴?」
「あほ。旅禍だ」
「……うるさいわよ……そんな事よりあたしあいつの所行ってみるから」
その場から立ち去る一護の背中を##NAME7##は見詰る。
「気になるのか?」
「もちろん」
「好きにしろ」
「あんたもいくでしょ?」
「……好きにしろ
それにしても珍しいな、お前が他人に興味を示すなんて」
##NAME8##は呆れているのか、ポリポリと頭を掻きながら溜息を吐いた。
「同じニオイがするの」
「?」
「あのオレンジ頭とあいつ……」
『あたしだけ知らなかったのか……』
あいつ。こと由衣は隊舎の執務机に突っぷせていた。
あれから、##NAME6##にも他隊の隊長格にも聞いてみたが皆知っていた「朽木ルキアの処刑」。
『だから一護は来たのかな?』
「おいおい、何してんだよ。手ぇ止まってんぞ」
『ごめんごめん。湊はどう??』
「…………」
手元の雑巾は真っ黒で、床の一部が綺麗に磨かれていた。
由衣はそれを見て薄く笑う。
『気分転換に出掛ける?』
答えも聞かぬ間に由衣は既に立ち上がっている。
「そうだな」
湊も手に持った雑巾を置いて、立ち上がった。
「花太郎ーまだなのか?出口はよォ」
「もうすぐそこです。ほらあそこの……」
四番隊第七席─山田花太郎は地下水路の天井を指差して、目を見開いた。
その出入口が開いたのだ。
「下がってろ。ガンジュ、花太郎」
斬魄刀を構えた一護は2人を下がらせ、鋭い眼差しで出入口を見据える。
入ってきた藍色と緑色。藍色の方は一護を見つけるとニヤッと口端を上げる。
「黒崎一護」
「……俺の名前……!」
ゆっくりと一護に近付く藍色─##NAME7##。
彼は威圧感のから唾をゴクリと呑み込む。
「あ、あなた達は……京極##NAME7##!……三席と櫻井##NAME8##四席!」
##NAME7##は花太郎に目もくれずに一護を見据える。
「やんのか?」
斬魄刀の切っ先を##NAME7##の首元に当てる。
すると彼女はフッと鼻で笑った。
「やんないわよ」
「は?」
思わず斬魄刀の切っ先を下ろしてしまう。
##NAME7##は1つ溜息を吐くともう一度言った。
「だから、やんないわよ。別件で来たの」
「……じゃあ何の用だよ?」
「話してみたかった」
「は?」
拍子抜けた表情に再び溜息を吐いた。
自分等の事を捕まえに来た敵だと思ったが、相手には戦意など微塵も無く、ただ「話に来ただけ」。
相手に戦意が無いのならば、こちらも戦いたくない。
「京極##NAME7##……ったか?」
「ええ」
「俺達の敵じゃねーならそこをどいてくれ。俺達は急いでるんだ」
「……そうね。じゃあ……最後にあんた達の目的は?」
「朽木ルキアを助ける事」
「……そう。邪魔して悪かったわね」
そう言い残して、藍色の髪を揺らしながら踵を返した##NAME7##。
出入口の真下まで来ると瞬歩を使い、風のように消えていった。
「な、なんだったんだよ」
「蓮和隊第三席京極##NAME7##……と同じく蓮和隊第四席櫻井##NAME8##」
「「蓮和隊?」」
花太郎の答えに2人は聞き返した。
「なんだそりゃ?」
「護廷十三隊にそんな隊……」
浦原も夜一も「蓮和隊」の存在等など言っていなかった。
それもその筈……。
「つい最近出来たんですよ
得体の知れない隊長、昇進を拒んでいた元三席の副隊長、元罪人の三席と四席、真央霊術院を抜け出した隊員、で構成された隊です」
「強ぇのか?」
「隊長と隊員については分かりませんが、三席と四席そして副隊長は……強いです」
「そうか……」
まだ知らない。
知る由もない。
蓮和隊隊長が風浦由衣 だと言うことを。
風浦由衣が日番谷由衣だと言うことを。
日番谷由衣が黒崎由衣だと言うことを。
『いい天気。空だけ見ると平和だ』
「そうだな」
上を見れば青い空。
視線を少し落とせば、立ち上る煙。
もう少し視線を落とせば、運ばれていく怪我人や慌ただしく走る死神。
「下見るとそーでもねぇけどな」
『もうすぐ平和になるさ』
「だといいけどよォ」
そう言って湊はぐーんと伸びをした。
その時。
「風浦君」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには穏やかな笑みを浮かべた藍染が立っていた。
『あ、えーっと……藍染隊長さん?』
「そうだよ。こうやって話すのは初めてだね」
『うん』
「君は確か……西島湊君だね?」
「あ、は、はいィ!」
名前を覚えてくれていた嬉しさに舞い上がったのか、湊の声は裏返った。
「2人とも瀞霊廷の暮らしには慣れたかい?」
『まぁまぁかな?』
「そうか。困った事があったら何でも協力するよ」
『そりゃあ助かるな。ありがとう』
由衣はニコリと笑うと、湊を連れてのんびりと歩き始めた。
湊は藍染にお辞儀をして、慌てて彼女の後を追い掛ける。
「なぁ。ちょっと冷たくねぇか?」
『##NAME7##と##NAME8##は護廷が嫌いなんだ。あんまり親しくしてたら2人の居場所がなくなっちゃう』
「それじゃあ、駄目なんじゃねぇのか?」
『?』
「嫌いなもんは克服しなきゃなんねーだろ」
『……そうだね。皆で克服しようか』
由衣は穏やかに笑った。
1人じゃ出来ないことがある。
でも、2人なら出来ることがある。
2人じゃ出来ないことがある。
でも、3人なら出来ることがある。
3人じゃ出来ないことがある。
でも、4人なら出来ることがある。
4人じゃ出来ないことがある。
でも、5人なら出来ることがある。
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