お題SS
□たんぽぽ
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昼の神室町を真島さんと歩いていると、
ひび割れたコンクリートの間から、黄色い花を咲かしている一輪の花が見えた。
「あ、真島さん、ちょっと待って」
「ん〜?」
立ち止まって二人でしゃがんで見てみると、
春に咲く小さなタンポポが、風に吹かれて優しく揺れていた。
「神室町でタンポポ咲いてるなんて始めて見たかも」
「そやなぁ〜ワシも始めて見たわ」
「春ですねぇ」
「春やなぁ〜」
顔を見合わせて、お互いにフフッと微笑み合う。
「お前と歩くと新しい発見ばっかりや」
真島さんは、私の頭を優しく撫でた。
「よう気付いたな〜 ワシだったら気付かへんで通り過ぎてまうわ」
「下見て歩くのもたまにはいいんですよ?」
「そうかぁ〜?」
「10円拾ったりとか」
「─ハハ、なんやねんそれ」
真島さんはそう言って優しく笑うと、
私の手をぎゅっと繋いだ。