拍手SS

□女心×チョコ×口づけ
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夜。終わらないパソコン作業に飽き飽きしていた俺は、ソファーにドカリと腰を落とすと煙草に火を点けた。

自室のドアがノックされる。

「おう。なんや」
「私です」

その声に、俺は慌てて煙草を揉み消した。

ぴょこりとドアから笑顔を覗かせる彼女は相変わらず愛らしくて。
仕事終わりに此方に来たのだろう、
スーツを着ていた。

しかし、入ってくるや否や、なぜか急に不機嫌な表情になって…
無言で黒地に赤いリボンで結ばれた小さな紙袋を俺に差し出す。

「おっ。もしかしてチョコレートかいな。わざわざ届けに来てくれたんか?」

彼女の表情が気にはなったが、貰えた嬉しさの方が勝っていた俺は、思わず顔が綻んだ。

受け取ろうと手を伸ばすと、
彼女はスッと俺の手を避け、紙袋を引っ込めた。

「な、なんやねん…なんか怒ってへん?」
「……それ、もしかしてチョコレートですか」

彼女はソファーの横に置かれたダンボールを指差した。
中には沢山のチョコレートが入っている。組員達の嫁やら、キャバ嬢やらから貰ったのを、めんどくさいから子分の西田に一つにまとめてもらったのだ。

(し、しもた〜…!片付けるなり、隠すなりしときゃよかった〜……!!阿呆か俺は!!)
今更ながら後悔する。

「そんなにあるならいらないですね」

そう言って踵を返して帰ろうとするのを、俺は腕をつかんで慌てて引き止めた。

「─ちょ、ちょい待ちーや!いる!いるって!!」
「…だって。」
「だって、…なんや?」
「…あんなに高級そうで、箱も大きくないし…それに比べて私のは……。見せたくない」
「…なに言うとんねん。わざわざ届けに来てくれたんやろ?」

俺は腕を引き寄せると彼女を抱きすくめた。

「高いとか、大きさとか、そんなの関係あらへん。俺はお前に貰えるんがホンマ嬉しいんや。せやから、そんな切ない顔せんといて?いつもの可愛い笑った顔見せてや」

彼女の額にキスを落として、そのつぶらな瞳を見つめると、
いつもの柔らかい優しい笑顔を俺に向けた。
「なぁ…そのチョコ食べてもええ?」
「……うん。」

ソファーに座って箱を開ける。

「トリュフチョコレート作ったんです。真島さん甘いの苦手だから、お酒多めに入ってるんですよ?」
「…お。めっちゃ旨い」
「ほんと?良かったぁ…」

安心した様子の彼女。なんでこんなに可愛いのだろう。
俺は堪らなくなってその唇を奪った。

「んっ─…!」

深くて激しい口づけに彼女の体から力が抜ける。俺はその体を抱き止めて、十分に味わうと、唇を離した。

「どや?自分で作ったチョコの味は?旨いやろ?」
「……もう。分かんないですよ、そんなの」
口を尖らせて軽く睨んでくる。

俺は楽しくなってまた一粒チョコを食べると、再び彼女に口づけた──。



2/14 〜Happy Valentine's Day!〜




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