テニスコート
□9.召し上がれ!乾特製野菜汁
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「よー鈴木!早いじゃねーの!」
着替えを済ましてコートへ向かうと、後ろから晴れやかな声がした。
「も、桃先輩…。頭掴まないでください。」
「いや〜わりぃわりぃ。いい高さにあるもんだからよ。」
手をひらひらさせながらいたずらっぽく笑う桃先輩。
「越前よりチビだからな…ま、テニスは身長でするもんじゃないけどな。」
準備運動を終え、柔軟に移る。
足を延ばして座り、体を前に倒すと
「ほら、もっと頑張れ。」
背中を思いがけない力で押されて、私は断末魔の声を上げた。
「あああ゛あ゛あ゛あ゛!」
「お、おいおい、そんなに痛くねーだろ…。」
いつも飄々としている桃先輩が青い顔をして、手を放す。
「桃先輩…ちから…強すぎ…。」
恨めしく見上げる私をなだめるように、眉根を下げる。
「悪かったよ。でも、ちょっと体堅くねーか?」
「そうですかね?」
「ああ、堅いな。」
そう、肯定したのは、桃先輩の声ではない。
「うお!乾先輩、いつからいたんすか。」
「今だよ。早いなお前ら。」
メガネをくいとあげると、話を戻す。
「鈴木、体力測定の長座体前屈はいくつだった?」
ふいに問われて、記憶をひっぱり出す。
「30センチくらい…。」
「かたっ!」
桃先輩のオーバーリアクションに、乾先輩がふっと笑みを漏らした。
「嘘はいけないな。お前の記録は25.2センチ。手塚より堅い。」
「え…。」
そう声を漏らした私と桃先輩は、どっちに驚いていたのだろうか。
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