テニスコート

□8.才能
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五月晴れの空の下、各選手がコートに入る。

私と海堂先輩。

相手コートには、不二先輩と菊丸先輩だ。

「なあなあ乾〜」

ネット近くの前衛に着いた菊丸先輩が、いつもののほほんとした口調で乾先輩を呼ぶ。

「鈴木は、ダブルスの試合はじめてなんでしょ?俺たちは手加減したほうが良いの?」

この悪気のない言葉に、海堂先輩の肩がピクリと反応する。

「必要ねえ。本気で来てくれないと、意味ないっすよ」

迫力のある声に、菊丸先輩は気弱そうに肩をすぼめる。

「そうだな、本気でいこう。これも勉強になるだろう」

乾先輩の指示に、穏やかにうなずく先輩たち。

一方、海堂先輩はピリピリしてるし、私は不安でドキドキしてた。

サーブは私から。

ボールを数回ついて、呼吸を整える。

高く上げたボールをスイートスポットでとらえ、打球はコートをはねる。

その先には不二先輩が、素早く待ち構えていた。

「驚いたな。もう普通に打てるようになるとはね」

そう言いながら、涼しい顔で打ち返す。

数回のラリー。

高く上がったボールを、菊丸先輩がとらえる。

「菊丸ビーム!」


その後も、ラリーを続けるも、間に開いたスペースを突き、ボールはコートに落ち、最初のゲームは1ポイントも取れずに終わった。

だめだ、コート内を走り回るうちに、空いたスペースに入れられてしまう。

(…違う!)

空いたスペースに入れられるんじゃない。


空いてるところに、ボールが来るんだ!


後衛なら、ペアの動きも、相手コートも広く見ることができる。


(視野を、広げて…!)


どこに打たれても、反応できるように。


次のゲームは不二先輩のサーブからだ。

「成長が速いのは認めるけど、ボールをコートに入れるので精いっぱいってところだね…。
…クス。でもそれだけじゃ、勝てないよ」

素早く位置についてボールを待つ。




「・・・!」







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