テニスコート
□3.荒井様ラケット騒動
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「ふぅ、50〜」
仮入部と言っても、朝練込の本格練習。
「部員はもっとハードなのかな〜」
「でも、すごいよ鈴木さん。リョーマ君に負けないくらいの早さで腹筋50回終わらせちゃうし、全然疲れてないみたい」
このカチローくんこと加藤勝郎くんは、同じクラスの男の子だ。
「ていうか、リョーマ君テニス部だったんだね 」
「言わなかったっけ」
涼しい顔をしているリョーマ君は相変わらず不機嫌な声で言う。
「演劇部に入るんじゃなかったの?」
「先生に勧誘された…ミクスドに」
「...へえ」
「...。」
「...なに」
「怒ってるでしょ」
一瞬動きを止めたけど、表情は変わらない。
「なんでわかるの?」
(やっぱり怒ってるんだ…。)
「そんな声出されちゃねえ」
「…俺そんな声出した?」
どうしてか突っかかるリョーマ君の声を、二年生の声が邪魔した。
「おいお前、ちょっとできるからって調子こいてんじゃねえぞ」
この人朝練の時から、難癖つけてくる…荒井先輩だっけ?
うわぁなんかすごい怒ってる。
「今日はレギュラー陣も遠征から帰ってくる。あんまりなめてっとこの荒井様が…」
ありがたい荒井様のお言葉は、新入部員の歓声によって消された。
「青学のレギュラーだ!」
カチロー君の声に、振り向くと、青と白のレギュラーウェアを来た人たちがコートに入ってきた。
(さすがに、すごいオーラ…)
ウェアが違うだけで、こんなに迫力があるものなのか、おもわず魅入ってしまう。
「あ、女の子だ!ここは男子テニス部のコートだぞ−!」
その中の一人が、抱き着かんばかりの勢いで飛んできた。
「英二、この子がミクスド候補の一年生だよ。名前は確か…」
「鈴木です。よろしくお願いします!」
「な〜るほど!俺、三年の菊丸英二よろしくぴーす!」
「よ、よろしくぴーす…」
圧倒されていると、苦笑して、さわやかな声が割り込む。
この人、確か副部長さんだ。
「みんなにも早く慣れてもらいたいから、コートで打っていいよ」
口々に喜ぶ一年生の中で、私は一人戸惑った。
「あの、私ラケット握ったことないんですけど…」
助けを求めるように視線をさまよわせると、一人、胸を張るやつがいる。
「じゃあ、俺が教えてやるよ。先輩の手を煩わせるわけにはいかないもんな!」
「鈴木さん、ラケット持ってるの?」
心配そうに聞いてくれたのは、同じ一年の水野君。
そうだ、教えてくれると言ったのはテニス歴二年の...
「誰だっけ?」
「堀尾だ!」
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