テニスコート

□2.ミクスドやらないかい?
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「今日から三日間は部活動見学、来週から仮入部が始まるが、運動部に行く際は、着替えてから向かうように」

入学二日目の帰りの会…もといホームルームが終わり、心なしかため息が漏れる。

演劇部は休止中だし、他の部も、中途半端にできなそうだし、

「部活どうしようかな…」

「独り言多いね、あんた」

割り込んできた声にはもう聞き覚えがあった。

「…声に出してた?」

「思いっきりね」

ついでに昨日も。と付け足されたので、笑うしかない。

「私、鈴木ひろし。よろしく」

「…越前リョーマ」

良かった、無視されるかと思った。

「ひろしでいいよね。俺のことも、リョーマでいいから」

「え、ほんと?」

なんだ意外と友好的じゃーん。なんて思ったのもつかの間。

「ファーストネームのほうが慣れてるからね」

やっぱりそっけない。

「て、ファーストネーム?もしかして外国育ち?」

「…まあね」

そう言うことなら、その王子様みたいな外見にも納得がいくような気がする。

「リョーマ君、もう部活決めた?」

悩みの種が思わず口に出てしまった。

「そっちは決まってないの?」

相変わらず、声のトーンは変わらない。

「演劇部に入りたかったんだけど、休止だからね…。いろいろ見学はするつもり」

「ふーん」

少しも表情を変えないまま、不機嫌な声だけを残して教室を出て行ってしまった。

「え、リョーマ君の部活聞いてない…」

「ちょっとあんた、リョーマ様の知り合い?」

今度は鋭い声が私を襲った。

「あんた、名乗りなさい」

かっぱつなツインテールの女の子が、有無を言わさぬものいいをする。

「鈴木…ひろしです」

「私は小坂田朋香よ。この子は竜崎桜乃」

一方的な口調ではあるが、笑みに敵意はなく

「初めまして、鈴木さん。ごめんね、いきなり」

となりの竜崎さんも、女の子らしいおしとやかな笑みを浮かべていた。

「いいけど、リョーマ君の友達?」

「ファンよ!」

話題を振ると、目の色を変えてリョーマ君の良いところを語りだした。

相槌も打てないほどのマシンガントークは、私には初めてのものだった。


(やっぱ、都会って怖ーい)





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