テニスコート

□1.これからここで
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4月某日。

「な、なんでこんなに人いるの?」

青春学園中等部の入学式にやってきた私は、まだ肌寒い陽気の中いっそう冷や汗を流す。

青春学園は文武両道、中でも男子テニス部は全国でも屈指の強豪校・・・らしい。

そしてさすが東京の学校、会場である体育館の入口にたたずみながら、人のひしめく光景に思わず息をのんだ。

「ま、前向きだ。前向きに考えるんだ。
 友達百人、すぐにできそうだよね」

「ねえ」

突然呼びかけられて振り向くと、そこには王子様みたいなきれいな男の子が立っていた。

「そこに立たれると邪魔なんだけど」

「え」

不機嫌な声に手に汗がじっとりと湧いてくるのがわかった。

「ご、ごめんなさい」

いいけど、とそっけなく歩き去っていく男の子の背中を見ながら、私は戦慄した。


(と、都会の人怖ーーい!)


それは雷のように、一瞬で私の心をなぎ倒した。







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