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□COME BACKF
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岩ちゃんの口から発せられた言葉に唖然とした。なんにも言えないでいる俺に岩ちゃんはひたすら謝っている。
ねぇ、なんで謝ってるの?
俺をふったから?
違うよ。岩ちゃん。俺も臣が好きなんだよ。だから、岩ちゃんは俺に謝る必要はないんだよ。そう言おうとした時になった俺の携帯。ポケットから携帯を取りだし確認すると臣のお父さんからだった。
『もしもし』
『隆二くん?広臣が...広臣が...』
電話の向こうのお父さんはかなり焦っているようで俺は嫌な予感がした。
『広臣...が、いなくなった。』
えっ?びっくりしすぎて携帯を落とすとこだった。
『メールが来てさ...親父、今までありがとう。って。電話もかけて見たんだけど出なくて。』
『そうですか。俺も探してみます。』
そう言うと俺は通話終了ボタンを押した。そして、そのままその場に崩れ落ちそうになった。けど、岩ちゃんが咄嗟に支えてくれた。岩ちゃんは、震えの止まらない俺の体を優しく、まるで壊れ物を扱うかのように抱きしめてくれている。
『隆二さん。どうしたんですか?』
岩ちゃんの心配そうな声が響く。
『臣が...消えたって。』
『え?登坂くんが?なんで?』
岩ちゃんは、目を丸くして驚いている。なんで?って聞かれても俺もわかんないよ。そう思っていたら岩ちゃんの体が俺から離れた。その代わりに、手を差し出された。そして...
『隆二さん。探しに行きましょう。ここにいても何も変わらないですよ。』
と言ったのだ。
確かに岩ちゃんの言うとおりだと思った俺は差し出された手をしっかり握った。そして、岩ちゃんの部屋を飛び出すと二人で臣の家に向かった。
臣の家の前までくると、誰かに呼び止められた。振り返ると、たぶん大家さんがたっていた。そして、俺達に手紙を差し出した。
『登坂くんから。』
俺達は、大家さんに頭を下げると手紙を広げた。そこには、綺麗な字でこう書いてあった。
隆二、岩ちゃんへ
俺は、愚かでバカだった。隆二を散々傷つけた。隆二から幸せさえ奪ってしまった。最低でごめんな。俺のことなんか忘れて岩ちゃんと幸せになって。岩ちゃん!隆二のこと頼むよ。そして、ほんの数日だったけど幸せをありがとう。俺は、遠い所に行きます。
さようなら。 広臣
あれから、1年。俺と岩ちゃんは幸せに暮らしている。そして、結婚を控えている。手紙の最後に...
俺の最後の願いは、ふたりが結婚することですって書いてあったから。
色々あったけど、どこにいても空は繋がっているから大丈夫。今、同じ空を見上げていることを願っているよ。
臣、最高の遠回りをありがとう。