10/27の日記

20:07
忘れもの(リュオver)
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「失礼致します、ノーブル様」

ノックの後室内に入ったジンは、手にしていた物をそっと主に差し出した。
可愛らしいピンクの包みに、リュオは首を傾げる。

「何だ?これは」
「こちら、あの方のお忘れものです」
「……またか」

忘れものという言葉に、リュオは呆れたようにため息を吐く。
仕事を依頼し彼女がノーブル城に滞在すると、毎回何かしら忘れものをしていた。

それはもう、ワザとじゃないかと疑いたくなる程に。

「で?今回は何だ?」
「はい、どうやらパンつ……」
「は?」

ジンの口から出た言葉に、思わず目を見開く。
一瞬で様々な思いが駆け巡った。

「ですから、パン……」
「ちょっと待て」

言い直すジンを制し、リュオは腕を組んで彼を見据える。

「……見たのか?」
「はい?」
「だから、その……ソレ」

質問の意図が分からず疑問の声を上げるジンに、包みを指差す。
すると、彼は納得したように口を開いた。

「はい。私がこの目でしっかりと、あの方の物だと確認させて頂きました」
「な……っ」

にっこりと微笑むジンに絶句する。

「流石にそのままお返しするのは味気ないと思い、このようにラッピングさせて頂きました」

如何ですか?と問いかけてくる執事に、最早開いた口が塞がらない。

(ちょっと待て、ラッピングするか?普通。いや、そもそも何でジンが見ただけでアイツのだって分かるんだよ!)

思考がフル回転し、訳も分からず憤りを感じる。

(俺だってまだ見た事な……って、何言ってんだ俺!)

邪な思考が過り、リュオはそれを断ち切るように大きく息を吸い込んだ。
そして、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

そんな主の様子をジンが面白そうに見つめているのだが、リュオはそれに気付かない。

「おい、何だってお前が、アイツのだって知っている?」
「いつも拝見しておりますから」
「……!?」

(いつも!?)

今度こそ完全にフリーズしてしまった主に、ジンは爽やかなまでの笑みを向けた。

「受取書にサインをする際、あの方の筆跡は見ておりますので」
「は?筆跡?」
「はい」

にこやかに頷きながら、ジンは包みを開いてその中身を取り出す。

中から現れたのは、ボロボロになった一冊のノート。

「!」
「こちら『パン作りのレシピ集』になります」

(コイツ……)

完全にからかわれていた事に気付き、リュオは拳を握り締めた。



Fin

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