08/11の日記
00:09
【ウェルナーの日課】
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月明かりに照らされたバルコニーで、カチリと音を立ててオレンジ色の光が灯る。
愛用の煙草に火を点け、ウェルナーはゆっくりと煙を吸い込んだ。
そして、一日の疲れと共にそれを吐き出す。
(全く、あの方は……)
紫煙を燻らせながら、今日一日の走行距離(約10Km)を考え、ため息が漏れる。
公務から逃げ出す主を追ってアルタリアの街を駆けるのは、最早日課になっていた。
煙草を銜え、取り出した携帯端末に今日の逃走ルートを入力していく。
集めたデータを基に、監視体制と警備体制を強化せねばと考えた。
新たに警報装置を設置する場所に目星を付けたところで、フッと表情を和らげる。
「あっぱらぱーなところは相変わらずだが、あの方に出会われてから随分と変わられたな」
将来の事を考えるようになったし、何より心からの笑顔が見られるようになった。
幼い頃からオリバーを見続けてきたウェルナーにとって、それは衝撃だった。
いつの頃からか、周りの顔色を窺うようになり。
何に対しても執着をもたず、どこか諦めたような日々を送っていた主。
それが、彼女との出会いで一変した。
楽しげに笑う姿に、不覚にも目頭が熱くなる。
「これで抜け出さなくなれば、申し分ないんだが……」
それは無理だろうと悟る。
むしろ、彼女とデートしたいが為に逃げ出す事が多くなっていた。
手すりに背を預け、空を見上げる。
月のように、太陽の影となって見守っていければと、そう思わずにはいられなかった。
最後の煙を吐き出し、短くなった煙草を携帯灰皿にしまいこむ。
「さて。明日こそ、あの書類の山を片付けさせなければ」
ひとりごち、ウェルナーは静かにその場を後にした。
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