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□命の選択
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「この注射はエルヴィンに打つ」
「さっきアルミンに使うって…」
「俺は人類を救える方を生かす」
内臓が抉れ瀕死の調査兵団団長エルヴィン・スミスと黒焦げのアルミン・アルレルトの狭間で、リヴァイは命の選択を強いられていた。
人類の未来を見据えるならば『アルミン』を生かすべきだと言う意見と、『団長を見殺しにするのか』と二つの意見が揺らぐのは、両名、どちらが欠けてもここまでやってこれなかった事を誰もが認める実力者だからである。
託された注射の箱を片手に、リヴァイが目を閉じたその時だった…
「リヴァイ兵長!!!名無しさんが、名無しさんがぁ!!!」
エレンとリヴァイが【例の注射】の件で対立するその目の前に、負傷した名無しさんを背負ったジャン・キルシュタインがやって来たのだ。
熱風で焼け焦げたアルミンを生かすべきだと言うエレンやミカサ、団長を生かすのが優先だと言うリヴァイで対立するその間にやってきた、鎧との交戦の末に出血が止まらなく虫の息の名無しさん
瀕死の三人を目の前に、リヴァイは息を呑み込んだ。
「……名無しさん。おいジャン!!!コイツを死んでも守れと言っただろ!!!何テメェがノコノコ生きてるんだ!」
「すいませんリヴァイ兵長…。俺は……」
ジャンの胸ぐらを掴み上げ取り乱すリヴァイ。だが今此処で生きているうちに誰かに注射を打たなければならないのだ。
「兵長!!!そんなことしていたらアルミンが死んじまう!!」
「兵長、エルヴィン団長が……早く、早く例の注射を!!!」
周りの声が一斉に注射を使用できる権利を持つリヴァイに集中するが、この命の選択の『正解』を考えれば考える程に頭が追いつかない
「…俺は………。」
「リヴァイ兵長!!!アルミンがいなきゃ人類に未来は無い!!」
「違う!!この悪魔を起こせ!!」
「リヴァイ兵長!名無しさんが、、名無しさんが兵長を呼んでいます!!」
「なに!??」
すかさず名無しさんに寄り添うリヴァイ。するとその小さく開く口で、何かを懸命に訴えていたのだ
「…名無しさん、どうした?」
「兵長……。最…期に……会えて、…良かった」
「最期なんかじゃねぇ!!お前はこの先も俺と共に」
「……ううん。……私は……ここまで…です。……団長…を、助け……て」
「無理だ!!!俺はお前の居ない未来なんて要らねぇ」
そんな二人の会話を耳にしたエレンやミカサは『人類の未来を選ぶと言ったじゃねぇか!!』と怒りだす。
それでもリヴァイは名無しさんを生かそうと注射を腕に当て付けた
「オイ、テメェらよく聞け。俺はここで名無しさんを生かす。エルヴィンやアルミンには申し訳無いと思うが、選択肢は他にねぇ」
「アンタ馬鹿じゃねぇのか!?!私情を挟むなよ」
「エレンよ、言葉を慎め。私情だ?お前の馴染みを生かす行為も私情と言っちまえばそこまでだろ」
「違う!!俺はアニの正体を見破ったのも、マルコの立体機動装置を覚えていたのも名無しさんじゃないって言ってるんだよ!」
「兵長…仲間割れしてる時間は無いですよ…。今エルヴィン団長が……息を引き取りました。。。このままでは全員死にますよ!!!」
「………そうか。」
考え込むリヴァイは、名無しさんの頬にそっと手を添えると優しく微笑んだ。
「名無しさん。俺はお前がどんな姿になろうと、一生この気持ちはかわらねぇ」
「「「リヴァイ兵長!!!!」」」
「このクズ野朗ぉぉ!!!」
「黙れエレン。俺は決めた。今この瞬間俺は命の選択をしたのだから誰にも文句は言わせねぇ」
……
そして、リヴァイの選択により
人類の未来は大きく変わったのだった。
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