□特別な君
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「リヴァイ兵長!!!」




リヴァイは今、ここで助かれば九死に一生と言わんばかりの状況に陥っている。


彼の目の前には6体の15m級、後ろには知識があるだろう猿巨人がいて囲まれて身動き取れない状況なのだ。


木の上でリヴァイの名を叫ぶ兵士方の刃はボロボロで、立体機動装置のガスも残りわずかで戦えやしない。だから『リヴァイ』の頭を冷静にさせてるために、名を叫ぶ事しかできないのだ



いや……


リヴァイ程の腕があればこんな状況は直ぐに乗り越えれる。全方位の15m級を二体処理さえできれば、脱出可能なのだ。




だがそれは、





……抱えている女が居なければの話なのだ。


 







「リヴァイ!!お前が居なければ我々人類はどうなってしまう!!」


「もう諦めて、置いてくんだ!!!」




木々の上で負傷したエルヴィンやハンジは叫び続ける。



此処でリヴァイが居なくなれば、兵士を100人食われた……とも言える程の被害が及ぶのだ。





だがしかし、リヴァイはエルヴィンの指示や
ハンジの声に耳を傾けようともしないのだ




忠誠的な彼が、こんなにも頑なに指示を守らない事などあっただろうか?




「リヴァイ!!!!!」




エルヴィン団長達が見つめる中、リヴァイの前方に周ってきた猿巨人はしゃがみ込み、リヴァイに向けて人の言葉を喋り始めた




『……おい、お前の仲間の『置いてけ』とは、怪我をしたその女を捨てろって意味だろ?捨てないのか?その女』






「……猿、てめぇ、喋れるのか」



今まで前例のない『巨人が話す』ことに対してリヴァイは警戒をする。




そしてこの知識があると思われる猿から名無しさんを守るように、リヴァイは背に彼女を隠した




『俺は質問している。捨てないのか?女を』



 
猿の巨人はその大きな指でリヴァイの背にいる名無しさんを指す。
 


猿が彼女を食うつもりなのか、何が目的でそんな事を聞き出したのかは、流石のリヴァイでも分からない。



だが、猿を煽ったところで此方が不利になってしまう事はわかっていたので、リヴァイは答えを口にした。



「こいつ……名無しさんは俺にとってはただの兵ではない」



『どう見てもただの人間だろ。ここでお前が俺に殺られるとしても、女捨てないのか?……』



その、猿巨人の不気味な質問にリヴァイはなんのためらいも悩みも隙も見せないで、真っ直ぐに答えを出した




「あぁ、そうなるならば俺はこいつと一緒に逝くだろう。」



猿の質問に迷いも見せなかったリヴァイに驚いたのか『そうか』の一言を最期に、猿巨人は会話を止めた






そして緊張が走る。






リヴァイを目の前で、猿巨人は頭を掻き何かをかんがえている様子だ。それを、今がチャンスだとしっかりと名無しさんを担ぎ直して、起動に乗る体制を整えた。


その時だった。



『おい、飛ぶの待て……小僧』


「あ?……」
 

リヴァイは再び話し出した猿の巨人に視線を向けて硬質ブレードを引き抜く。

   


『俺は、お前の様な勇敢な野郎は嫌いではない……俺が今から30秒だけその辺の巨人の動きを止めてやる』



リヴァイは聞いたこともないその能力に宛にはしていなかったが


猿のこの一言により、今までで自分達を食らおうと必死に動いていた巨人の動きは止まった


「……これが、てめぇの力、なのか……。まぁいい」



どんな形であろうとリヴァイにあるのは
名無しさんを助けたい、一緒に連れて帰りたい…その一心だけ。



猿に与えられた30秒と言う短い時間だが、リヴァイは木とワイヤーを器用に使い


腕力を絞り上げエルヴィンや仲間のいる木々の上に上り詰めることができたのだった。







「リヴァイ!!無茶しやがって……」


 
木の上からハンジは助けの手を差し出す





リヴァイも人を担ぎこの高さを登ったのはきつかった様で、すぐにハンジの手を掴む。
   




リヴァイは背中に担いできた
血だらけの彼女をエルヴィンに託した



「すまねぇ、エルヴィン……手を貸してくれ」


「あぁ、あとは私に任せろ」


エルヴィンは名無しさんを背に担ぎ
リヴァイに装備を整えさせる


ハンジは動き始めた巨人を見つめ
疑問を言葉にせずにはいられない


「それにしても、なんで他の巨人は一瞬動きを止めたんだ!?」



ハンジは巨人達の方を見るが



今は撤収したほうが懸命と思われたため、調査したいことは山々だが




指示通りに撤収することになった。



そして







……最後にリヴァイは



巨人達に引きちぎられる
ペトラやオルオ……

そして、沢山の名無しさんの同期の
104期生達を横目で見下ろした






(すまねぇ、俺は……名無しさんがいない世界なんて考えられなかった……。)

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