□絶望の選択
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あれ……


今の記憶…俺が人間の時の…?


……俺、鬼になる前は医者をやってたんだっけ?うふふっ。楽しかったなぁ〜



催眠術なんて使えないのに、ちょっと『催眠療法の専門医です』って言えば、病気の奴らはみーんな俺を頼りにしちゃって。



どいつもこいつも『病気はもう治りますか?』なんて聞いて来たけど、医者でも何でもない俺にそんな事聞いたって、…意味ないよねぇ?


本当に病気が治ってきたと信じた後に


『俺はただの人間。最初から医者じゃないし催眠療法の知識なんて全く無いよ〜? ふふっ。泣くのかな?…騙されるお前が悪いんだけどなぁ』と言った時のあの顔。


……嗚呼…、本当にたまらなかったなぁ


人間って本当に単純で、馬鹿な生き物


俺はそんな人間を辞めて鬼になれた事は、本当に有り難き幸せってやつだと思う。



でも……


俺が『治るよ』って嘘をつき続けた挙句、本当に自分の生命力で病気を治した子がたった一人だけいたっけ。


不治の病と言われていた病気だったのに、自力で直したあの女……。俺に最後まで『本当にありがとう』と言ってきたけど、、



……なんで今それを思い出すんだろう。





あ…………。



もしかして、この列車の中にあの時の子がいるのかな?



俺はそんな事ありえないと思いながらも、鬼の能力を行使し、列車に乗り込んで来た三百人程の乗客を探した。


すると本当に偶然なのか、いや…必然なのか……俺が人間の時にいんちき催眠療法で診ていた彼女が……


それに……ただの乗客ではない。鬼殺隊の柱の隣に座っている。こんな偶然があるのだろうか?



……


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