□絶望
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「お兄ちゃぁぁああんんん!!!」




お兄ちゃん……と、呼ばれるのは【妓夫太郎】と言う名の持つ上弦の鬼は、泣きじゃくる妹が執拗に背中にひっついてくるので仕方なく後ろを振り返った。




「まぁた泣いてるのかあぁぁ
 おめぇは一人じゃぁ何もできやしねぇなぁ」




『俺がいなきゃなぁぁ』と笑いながら妹の髪を撫でる妓夫太郎。



鬼だと言うのに兄らしく、妹を想うその様子は人間のようにも感じられる




鬼舞辻無惨の血を分け与えられたこの二人の兄妹は、夜も眠らぬ街…ここ遊郭を巣とし、何年も何年もの時間をかけて人間を食い殺して暮らしていた。




鬼が居ると感づかれてなのかは定かではないが、度々この遊郭には鬼殺隊がやって来る。しかし一度たりとも二人は首を刎ねられた事などはない

更に言うならつい先程も訪ねて来た三名の鬼殺隊と、妹の堕姫が奮闘したばかりだった



「お兄ちゃんが早くでてこないから
 アタシの……アタシの顔が
 こんなになっちゃったぁ〜!!!」


「泣くな泣くなあぁ〜
 鬼なんだかからよぉぉ
 そんな傷くらい治せるだろぉ?」


「そうだけど、あたし悔しいのッ!!!」



やってきた3名の鬼殺隊は柱であった。だからこそ戦いでボロボロになった堕姫は泣きながら兄に縋り付いていたのだ……



「柱相手におめぇはよくやったぁ」」    




柱は強い。格別だ。


だが、遊郭に独断でやってきた柱達は堕姫の帯に首や手が切断され、ごろりと地に落ちているというのが現実だ。

それは、柱が三名もいたというのに妓夫太郎と堕姫の首を跳ねることが出来なかったと言う意味でもある。



「……!?てゆうかお兄ちゃん
 何でそいつ持ってるの?え、生きてるし」


「ひひっ
 こいつかあぁ??
 こいつはなぁぁ…」



堕姫は、自身の頭をヨシヨシと撫でていた兄の側に崩れ落ちている女を見つけ、それが先程自分が切断し損ねた柱の一人だと気づき面白くなさそうに顔を見せた。


「そいつ。アタシが殺る」

「おめぇはやっぱり頭足りねぇなぁぁ 
 まだ分からねぇのかぁ??」

「なにが??」



不愉快だと兄を睨みつける堕姫。


しかし妓夫太郎はその人間の女を、落ちてある帯で両手両足を縛りつけて逃げることができないように吊るし上げたのだ。










「……私を……何故殺さないのですか…」



吊し上げられたナナシは震えた声で目の前の妓夫太郎に話をかけるが恐怖でしっかりと声を発することも出来ない。そんな彼女を見て、妓夫太郎は満足そうに笑みをこぼした




「おめぇぇ、頭悪いのかあぁ?
 俺達がお前だけを生かしてる意味を
 分からねぇってかぁ……?
 おめぇぇも可哀想な奴だなぁぁ」


「…そんなこと……、わかりません…。」


ナナシはわからないと首を横に振ると、
鬼はその不気味な顔をじりじりと近づけて来た



「分からないだぁぁあ??
 素直な奴だなぁぁ
 特別に教えてやる……

 おめぇはなあぁ
 おめぇはなあぁあ
 稀血なんだよぉぉ!ひひひ!!」



嬉しそうに顔をガリガリと自身の両手の爪で掻きむしる妓夫太郎。


その鋭い爪で顔の皮膚はぱっくりと裂け、裂け開いた爪痕から血が滲むがやはり鬼…。


一瞬にてその傷は癒えてしまうのだった。




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