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□盲目の愛
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「ねぇ…理解力低すぎない?」
ある日不死川玄弥と、日常会話をしていたナナシの上から毒づいた低い声が降ってきた。
『理解力がない』そう毒づいた言葉を吐くのは時透無一郎で、その、彼の吐く毒を浴びせられたのはナナシだった。
無一郎は黙り込むナナシの顔を見たと同時に、ため息を吐きだす
「ねぇ、黙ってないで何か言ったら?」
「…無一郎さん…ごめんなさい…。」
「もしかして、謝れば終わりって考えない?」
そんなつもりはない!と返答するナナシの声は、もう無一郎には全くもって届いてないのだった。
「ナナシは僕のこと何だと思ってるの?」
「……それは」
「ねぇ何ですぐに言えないの?」
「…」
『恋人です』
…と、恥ずかしさですぐに返答できなかったナナシに対し、無一郎の怒りは頂点に達してしまった。
怒る無一郎の目からは完全に光が消え去り、もうナナシにはどうする事もできない
「…俺が話すなって言ってんのに他の奴と楽しそうに話してるし、俺を恋人とも言えないって……ナナシって本当に馬鹿なの?…」
「ごめんなさい」
「別に謝って欲しいわけじゃないから。…もういい」
“もういい“
その一言を残して無一郎は何処かに行ってしまい、残されたナナシと…
そして事の発端である不死川玄弥は気まずそうにその場に立ち尽くしていたのだった。
「…なんか俺のせいで、ごめん」
無一郎が居なくなり。玄弥は申し訳なさそうにナナシの顔を覗き込む
「いや…私が悪いので、玄弥君は気にしないで」
ナナシは同期の玄弥に謝罪するが、不死川玄弥は意外と情が強い男なのでそうはいかないよ、と話続けた
しかし恋人である無一郎が怒ってしまった理由が…『僕以外の男と話したら、怒るから』との言いつけを守らず、玄弥と話していた事が原因だったため
これ以上他の男の人の側に居たくなく、ナナシは不死川玄弥にもう大丈夫だからほっといて…と心で願うのだった。
「なぁ、俺も一緒に時透さんに謝るからさ」
「大丈夫だよ、本当に…」
何故無一郎が怒ってるのかわからない玄弥は、なんとか二人の仲を持とうとしていた。
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先日怒らせてしまってからというもの
拗ねた子供のように無一郎はナナシの事だけ無視をしていた。。
明らかにいつもと違う二人を見て『喧嘩でもしたか?』と宇髄達も心配していたが、ナナシは自分の悪いところをしっかり直そうと“他の男”と口を聞こうとしない
だが、そんな彼女に怒り狂う男がもう一人いたのだ
「テメェ……目上の奴に問われたら返事くらい返せねェのかァァ!??」
「……。」
「…挨拶もろくにしねェしお前は本当に舐め腐ってやがんなァ!オィナナシ!!テメェのそのでけぇ面、俺が特別に叩き治してやらァ!」
ナナシの腕を力強く掴み上げた不死川、誰もが “やばい"と思ったその時だった
「俺のナナシに触んないでくれないかなぁ。例え不死川さんでも不快なんだけど」
ナナシの掴まれていた手を払い、不死川から守る様に背に隠した無一郎は目に光が無く
…完全にキレていた
その恐ろしい無一郎の圧に"あの不死川”でさえ一歩引いた程
誰もが言葉を詰まらせながらそのやり取りを見ていたのだった。
「…チッ、狂ってんなァ。勝手にやってろ」
怒ってその場を後にした不死川。
その後、無一郎は何度も首を傾げながらナナシを見ていた。
「…ねぇ、……」
「は、はい…」
「俺の事まだ好き?」
「それは勿論です」
「そう…ちょっと付いてきて」
そう言った一瞬微笑んだ無一郎は
手を引いて歩き出した