□とても大切な者
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「ヒョッ ヒョ 童磨殿… ところであの娘はまだ捕らえてるのですか?」



童磨殿と呼ばれた男は、ニコニコと笑いながら壺の中に入っている者に返答を返す


「…あげないよ?玉壺が何度俺に壺をくれようと、ナナシちゃんはあげないよ?」



良い加減にしてくれないかなぁ?と笑う童磨に、玉壺はクネクネと身体を捩じらしていた


「しかし稀血ならば価値が…」


「はぁ…。わからないかなぁ?稀血とか関係はない。綺麗で美しい、自分の好みの女は命尽きるまで側に置いておきたいんだよね」



扇をヒラヒラと振り、玉壺を遇らう童磨


しかし玉壺は稀血に執着し、こうして定期的に童磨の屋敷に『壺をあげるから、その“女”をくれないか』と言いに来るのだった。


「稀血を食らえば「あーしつこいなぁ。お前だって自慢の作品は壊さないで保管しておきたいでしょ?それとおんなじ」



ナナシは命尽きるその時まで
俺の横に居させるんだよ。


その言葉に言い返せなくなった玉壺は
壺に帰り、その場を後にしたのだった。



「何だって玉壺殿はナナシに執着してるんだぁ?…稀血なんて幾らでも探そうと思えば居るのにねぇ。まぁ…いっかぁ!!あ、そうだ!今日はナナシちゃんと一緒に蓮の華でも見に行こうかな」



童磨は楽しそうな足取りで愛しのナナシの眠る寝室へと足を運んだ。


いつも一緒に眠る大きなベッドの上でスヤスヤと眠るナナシに、自然と笑みが溢れる



「うーん、いつ見ても可愛い寝顔だなぁ。でも起きる時間だよ、ほら。」


「…ん、、童磨さん…おはようございます」


「おはよう、ねぇっ!起きて俺と蓮の華を見に行かないかい?」



ニコニコと笑う童磨



そんな彼が人を喰らう鬼だとは知らないナナシは、彼の優しさに心奪われていたのだった。



こうして同じ屋根の下に二人で人と同じく暮らしてるし、童磨は鬼とは思えないほどとても優しく、紳士で



そして人間の様に“思い出”を大切にしていた


ナナシと共に沢山綺麗な花や月、水や緑を見たいと言い。童磨は彼女を沢山色々な場所へと連れて行って“思い出”を築き上げる


たまに童磨が"何処か" にいく事があれば、待っていた褒美だとお土産を必ず持ってくるなど、兎に角ナナシに尽くしていた。


そんな彼に対してナナシも童磨との1日1日を大切にしていたし、彼が居なければ一人で生きていけないのではないか?と思う程に愛する想いが増えていくのであった。





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