□最期の贈り物
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『最後に少し話をしよう』




あの日、私と炭治郎は大粒の涙で前が見えなくなりながらも煉獄さんの前に膝をついた


『最後』って言葉は…私にはこの世界が壊れてしまったかのような程に重たくのしかかって来る


最後だなんて…

喋れるうちになんて…


そんな悲しい事、
言わないで欲しかった



でも、煉獄さんは致命傷を負っていて、もう限界がきていたのは未熟な私にでさえ見てわかる程だった。


例え柱であろうとこれ程の傷を負えば助からない事は分かっている



私の耳にはもう、煉獄さんの吐き出す息の音しか聞こえない



"苦しい"を超えたその息の音。


それでも脳内は、『煉獄さんなら大丈夫!きっと何とかなる!』そう思いたかったんだと思う…






ここにいる誰も死なせない…と、身体を張り、自分が柱だからと私達の盾になってくれた煉獄さん



それなのに、あの時に手も足もでなかった未熟な私…。


もっと…

もっと修行を積めばよかった。


もっともっと継子として、出来る事はあったはずだ。



……こんな事になるなら継子の私なんかではなく、力のある方が任務に同行してれば、煉獄さんがこんな目に遭う事はなかったのかもしれない




何度も私は自分自身を責めたし、この日までに至る一つ一つの行動全てを悔やんだ。



 
できるのならば、今が全てが夢であって欲しい

できるないのならば、……今までの記憶が全て無くなってしまいたい



できるのならば……




できるのならば、もう一度時間をやり直したい。


でも



…時は待ってはくれないし



どんなに私が願ったとしても、どんなに後悔しても、煉獄さんが帰ることはない








煉獄さんの命の灯火が消えてから、私は何度も何度も貴方の居る場所へ逝きたいと願った。



この事を煉獄さん、貴方が知ったら…怒りますか?貴方に救われたこの命を、自ら絶つ事は許されない事でしょうか?





私は…いつまでも、前を見る事ができないでいた。


        
優しく、正義感のある素敵な人間になりたいと思い…煉獄さんの全てに惹かれて継子になる覚悟を決めたんです。私は貴方にどんな時もあきらめないで前を向き続けるんだ、と


熱い想いを沢山教えてもらいました。


それなのに、こんな私で、、


何もできなくて…


「ごめんなさい」





_____





私はこうして何度も…あの最後の日、煉獄さんに初めて抱きしめられた時のことを思い出す。


『ナナシ、今まで良く、俺に…着いてきてくれた…。ありがとう』

『煉…獄さ…ん、』


声を詰まらせながら煉獄さんの最後のぬくもりを全身で感じたあの日のこと


温かい…強い身体。


___最期なんて…言わないでください、私はもっと、もっと貴方に教わりたい事が沢山……!__



涙が溢れ、
私の想いは何一つと言葉にならなかったこと



『…俺を、超えろ…。ナナシ、俺の…大切な、継…子』


『煉獄さん!!煉獄さん!!』



そして、今まで動いていた心音が、ゆっくりと消えていったことを。





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