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□バレンタイン 〜リクエスト〜
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「レノ、ななしからの伝言だ。『今日は帰れません』……伝えたぞ」
ルードの声で、恋人であるななしからの伝言を受け取った途端に、レノは大声を上げた。
「はぁぁ!??帰れないってどういう意味だよ」
「そんなの俺に聞いてどうする」
ルードの言ってることは正しいが、やはりレノは恋人が何故帰らないのか理由を知りたいのと、そもそも何故自分に直接伝えてこないのか
更に今日は密かに楽しみにしていた2月14日、バレンタインだからこそ尚更腑に落ちないのである。
特別な記念日って訳でもないが、甘い夜を期待していただけに怒りもあるレノ。しかし同時に自分が彼女に対して気に触るような何かをしてしまったのか…と、レノはすぐに端末をポケットから取り出し連絡を入れた。
「……ななしの奴…圏外だぞ…と。」
「……。」
レノは面白くなさそうにルードを睨むと、持っていた端末を乱暴にデスクへと投げ捨てる。
「あー。ついにオレ達終わりなのか?」
「……用事がある日もあるだろう」
「なぁルード。今日はバレンタインだぜ?お前には無縁かもしれねぇけどよ、男ってのはいつでも期待しちまう生き物なんだぞ、と」
「……」
ルードはサングラスの位置を片手で安定させると、レノの顔をもう一度見返した。
「……言うなと言われていたが、ななしは今夜は社長の護衛だ。…それと俺も男だ」
「はぁ!?????護衛??んなの聞いてねぇぞ!!おいルード、知ってる事全部吐け」
レノは突然の新情報にガタリと音を上げて立ち上がると、明らかに困っている相棒のルードに不満をぶつけるかの如く肩を強く掴んだ。
「レノが警備に行ってる間に社長直々にななしを指名しに来た」
ルードが『お前が怒るからと秘密にしとけと言っていた』と付け足す前に、既に怒っているレノ。
だがそれはルーファウス社長が自分の恋人を奪おうとしている事を知っているからこそなのである。
「職権濫用だろ」
「……今日はバレンタインだから、ファンが自宅にしつこく来るからとの事だ」
「そんな任務、別にななしじゃなくてもいいだろ」
「公私を分けろ、レノ」
「はぁ……。んなの無理だぞ、と」
武器のロッドを持つと、オフィスを無言で出てしまったレノは、そのまま怒りに身を任せエレベーターのボタンを最上階に押し、最上階…すなわち社長の住む場所へと向かう。
一般人はそう簡単に入られないが、タークスは特別なIDを持ち合わせているため簡単に入る事はできてしまう。そこまでタークスは信用された組織なのにも関わらず、レノは身勝手なまま行動を止める事はない
「公私を分けろだぁ?知るかよ、と。つーか護衛言って入り口すげぇ無防備じゃねーか」
普通なら社長の部屋の前にいるはずの警備…ななしが居ない事が完全にレノの怒りを頂点まで運んだ。
室内で護衛するなんて聞いたことが無い、とレノは歯を噛み締める
「へぇ。人の女をこんな夜に部屋に招いて、何してるんだ、と」
レノは何がなんでも中に入り様子を探りたい。もう何も考えずに流れに身を任せ行動して行くのだった。
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