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□窓から始まる恋 裏
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PM 11:42
久々の残業を終えて自宅へ帰ると、私は着ていた衣類を乱暴に脱ぎ捨て下着姿のまま両手を上げ背筋を伸ばした。
「〜んん〜疲れたぁ」、と独り言を漏らしてしまうあたり寂しい人間だとつくづく思う。
長い一人暮らし
ペットもいなければ彼氏もいない。
彼氏なんかいたらこんな下着姿で大欠伸なんてしないだろうよ、と思ったその時だった。
いつもは真っ暗で人の気配がしない目の前のアパートの窓で煙草を吸う男と目があってしまった。
「は!??人? さ、最悪!!!!」
急いで落ちているTシャツを適当に拾い、すぐに被る。
窓越しにある向かいの部屋はいつ見ても真っ暗闇だからと、絶対誰も住んでないだろう。、と油断していて、入居してからカーテンを付けることすら億劫になってしまっていたのが悪かったのだ。
彼氏がいないからって上下違う下着を付けてたり、キャラ物の下着を使用してなかっただけマシだったと思いながらも、もう一度先程男のいた窓を見てみると……
男はこちらを見ながらまだタバコを吸っていて、さらに何を考えているのか笑った様子でジェスチャーを始めた
(は?…私も窓を開けろ…と?)
男のジェスチャーを解読した私は嫌味でも言ってやろう!と窓を開けてみる。
__カラカラカラ
隣接されたアパート
設計ミスか、嫌がらせだろ!と思うほどに近く設置されている事から、大きな声を出さなくても目の前の男と会話ができてしまう
その男からの第一声は印象に残るものだった。
「随分とエロい下着だな、と」
「…変態。」
「変態だぁ?…俺は最初からずっとココで煙草吸ってたんだ、お前が勝手に脱ぎ出しただけの話だろ」
それにカーテンぐらいしろよと、男は楽しそうに笑いながら、タバコの灰を散らしていく
「いつも真っ暗だから住んでないと思ってたのよ」
「あー俺、仕事忙しくてあまり帰らないからな…」
目の前の男をよく見ると髪は赤色で、年齢は自分より少し上かな?と思うくらいだった。
自分をマジマジと見られている事に気付いた男は、恥ずかしいぞと言いながらもタバコの煙で輪を作り遊び始める
「つーか初めてだよな、会うの」
「そりゃあ同じアパートでもないし、会う機会がないからじゃない?」
私が笑うとそれもそうだなと男も笑う。
「なぁ、俺ならすぐこんな距離渡れるぜ?」
「いきなり何…でもここ16階だよ?」
16階から落ちたら…と下を覗くが、私と対照的に目の前の男は余裕余裕と笑っていた。
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