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□本当に想う人
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「ザーックス!!」
「お!準備できたのか?」
ななしはザックスが乗って来たバイクの後部に跨り、しっかり背中にしがみついた
そしてザックスはななしが乗った事を確認するとバイクを爽快に走らせる
「ザックス出発〜!!」
「了解〜!!」
_____今日は二人にとって
記念すべき日
…結婚記念日なのだ。
婚姻してから1年経つ記念に、バイクで海の見える別荘へ旅行に行く計画通りに海へとバイクをひたすら走らせる
そして二人は海が見えると、バイクから降り別荘近くの海岸で靴を脱ぎ捨て子供の様に走り出した
「綺麗ー!!」
「来てよかったな、ななし!」
ザックスはななしの手を取り、自身の贈った指輪を触りながら優しく笑う
「俺、一年前この場所でななしにプロポーズしたんだもんな〜。1年ってすげぇ早い」
「本当だね、時の流れってすごく早いね…」
ななしはザックスとの出会いや、今までの事を思い出し、彼の腕に抱きついた。
「ザックス…」
「ん〜?」
「ありがとう」
長いようで短かった一年
二人は目を合わせて笑合う。
「ななし海ん中入る?」
「ううん、ザックスは?」
「俺も砂が付くの嫌だから勘弁!」
夫婦になってからも、気の使わない関係のままの二人
そんな仲良く海岸沿いを歩いていたななし達の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった
「こんなとこで夫婦そろって散歩ですか、と」
ななしはその独特な話し方に、とても心臓が締め付けられたように苦しくなり、ザックスの手を握る力が強まっていく
そんな彼女の様子に気づいたザックスは、その聞き覚えのある声の主に、眉をしかめた
「…レノ……久しぶり」
「…2年ぶりだな……ザックス、ななし」
名を発されて困ったななしは、ザックスの背に隠れた
レノはそんな明らかに自分に対して不自然なななしの様子に申し訳なさそうに視線を落とす。
「……。」
「レノ元気そうだな!」
「まぁ、一応。」
「……。」
この気まずい空気が耐えられず、
またななしの気持ちを考えたザックスは、レノから離れようと彼女の手を引き、別荘へ帰る事にした
「あ、俺たち用事あるんだよね!
じゃあごめんっ!…レノ、またな…」
しかし、レノはザックスに手を引かれたななしの腕を掴み止める。
「少し…話ししないか?」
「……!」
いきなりのレノの行動に、どうすることも出来ずななしは涙を浮かべ
これ以上は、互いに辛くなるだけだと思ったザックスはレノに掴まれた彼女の腕を離させ、自分の背に隠す様に移動させた
「レノ、ななし、体調悪そうだし、悪いな…」
「…そうだな、と。」
ザックスの言葉で、レノは諦め静かに海岸沿いを歩きながら消えていってしまった。
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